第13回 エビが泳ぐ湖、ここはトロピカル南極

サンプルボトルにホウネンエビを採集した。
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 興奮したのもつかの間、湖水を採集してまた驚いた。水中に沈めたボトルを引き上げると、そこには大量の真っ赤なカイアシ類(動物プランクトンの一種で、体長は2~3mm)がぴょんぴょんと泳いでいたのである。なんてことだ!! こんなにもいるなんて! と私たちはいちいちワーワー言いながら調査を進め、最後のリムノポーラー湖でも同じような作業をしてキャンプ地へと帰っていった。

 GoProで撮った映像が早く見たかった。映像データをパソコンにダウンロードし、エビが水面を泳いでいたチェスターコーン湖の水中映像を再生した。

 かたずを飲んで画面を見つめる。氷の穴を抜けると、すぐに湖底の様子が見えた。砂のような湖底にところどころコケがフワフワと茂っている。カメラが湖底に到着した。

「おおおおおぉーーーー!」

南極リビングストン島の湖底に群生するホウネンエビ

 ホウネンエビの群れが水中をワサワサと泳ぎ、湖底を匍匐前進するように張り付いていた。まさかこんなにいるなんて。水面にただ1匹泳いでいた様子からは全く想像もできない光景。なんだかまるでアクアリウムの中を見ているようだった。そして、コンパクトデジカメで必死に1匹のブレブレのエビ画像を撮影して満足していた自分が少し恥ずかしくなった。けれどまあ仕方がない、あの頃は水中にこんな世界が広がっていることなんてまだ知らない時代だったのだから。たった2 時間半前のことだが、若気の至りである。