第10回 雪に閉ざされたバイヤーズ半島

チリ空軍のヘリコプターから。
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 まだ見ぬ調査地に期待を膨らませながら飛行すること約50分間、いくつもの山と氷河を越え、ついにバイヤーズ半島が見えてきた。のっぺりとした平坦な地形が雪ですっぽりと覆われ、所々わずかに緑色の地面が出ている。そんな中、真っ白な雪原の中にポツンと黄色いテント群と赤いイモムシのような小さな建物が2つ。

“あっ! あれがキャンプ地か! あれ? ここまで湖を全然見なかったな・・・”

上空から白い景色の中にポツンとキャンプ地が見えた。
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 ヘリコプターは旋回し、キャンプ地から少し離れた浜辺近くにゆっくりと着陸した。ヘリコプターから降りると、私は膝くらいまで雪に埋まった。なんだこの雪の多さは!!

 驚いている間にヘリコプターから荷物が下ろされ、もっと離れて伏せろという合図があった。強いダウンウォッシュ(吹き降ろしの風)が来て、ヘリコプターは再度飛び上がり轟音をたてて去って行った。急に静けさがおとずれ、キャンプ地のほうから2つの人影がこちらに近づいてくるのが見えた。

 2人はスペイン人のフィールドアシスタントだった。スノーシューを履いて橇を引っ張ってきたのがイニャキ、スキーを履いて橇を引っ張ってきたのがクロ。2人とも普段はスペインとフランスの国境にあるピレネー山脈で山岳ガイドをしているとのことだった。彼らの橇で荷物を運んでもらいながら、私たちは後ろをついて歩いた。湿って重い雪に膝下まで埋まる中を歩くこと500m、キャンプ地に到着した。

 イモムシ形の小さな建物(正式名称は“メロンハット”)は、一つが食堂小屋、もう一つが研究用小屋。その隣にテントが9張り組み立てられていた。私たちの居住テントだ。剥き出しになった周囲の地面を何気なく見ていると、私にとって驚きの光景が目に飛び込んできた。