第9回 今度は、南極まで2時間ほぼ貸し切り
「明日の午前5時の出発になったので、4時には空港に着いているように」
どうやらすんなりと南極行きの飛行機は運航されるようだった。夕食を手早くすませ、宿に戻り荷物のパッキングをして2時間ほど眠り、朝3時に宿を出た。
プンタアレナス空港に到着し、セキュリティーゲートを抜け、搭乗口で飛行機を待った。砕氷船に乗って1カ月がかりで南極・昭和基地へ向かうのが常である私には、今回のように普通に空港から飛行機に乗って南極へ向かう手続きに、いまだ違和感を覚えてしまう。係員に案内されるまま搭乗口を出ると、BAe-146という4発ジェット機があった。
飛行機に乗り込むと、100近い座席があるにもかかわらず、乗客は私たちともう1人の観光客の3人だけだった。ほぼ貸し切り状態。プライベートジェットでの豪華南極フライトと言った感じである。予定より30分早く、4時半に飛行機は離陸した。
夜間飛行だったが、少しウトウトしていると外は明るくなってきた。白夜に向かって飛んでいるのである。出発してから1時間半後、着陸に向けて降下を開始するアナウンスが流れた。そう、プンタアレナスから南極・キングジョージ島までわずか『2時間』で到着してしまうのだ。2カ月前、ケープタウンからノボラザレフスカヤ基地まで6時間で到着したことに驚いたばかりだが、今回はそれよりもさらに短い2時間での到着である。
氷のない南極
飛行機はどんどん降下し、低い雲を抜けると海が見えた。
“氷がない!”
それが第一印象だった。海氷が全く張っていない南極の海を見るのは初めてだ。私は窓に顔をピッタリと貼り付けるようにして眼下の光景に見入っていた。キングジョージ島はいくつもの半島が連なり、とても入り組んでいた。そのまま飛行機は轟音をたてて滑走路に着陸した。氷の上ではなく、地面の上への着陸である。