第8回 つかの間の日本、そしてまた南極へ

沿岸から130kmも内陸にあるのに、アンターセー湖の周りの崖や岩場にはたくさんのユキドリが暮らしていた。人が滅多に来ない場所のせいか、昭和基地周辺のユキドリよりもあまり人を警戒しない。
[画像のクリックで拡大表示]

 南極半島周辺は、気候の厳しい「大陸性南極」ではなくて、より温暖な「海洋性南極」に属する。今回訪れるバイヤーズ半島は南極特別保護区(ASPA:Antarctic Specially Protected Area)に指定されているため、普通は許可無しでは立ち入れない。それはつまり、生物の豊かな場所であることを意味する。

 ついこの前まで私がいたアンターセー湖に比べると、いつも調査をしている昭和基地周辺の湖はもうちょっと生物が豊かだ。アンターセー湖はシアノバクテリアの世界であるのに対し、昭和基地周辺の湖はシアノバクテリア+藻類+一部コケの世界。ところが南極半島ともなると、湖の中には動物(と言っても小さなプランクトンや昆虫)がいるらしいのだ。そこは南極であるにもかかわらず、湖はシアノバクテリア+藻類+コケ+動物プランクトン+ユスリカという世界になっているらしい。

 そんなわけでこれから、この3つの生態系のうちもっとも生物相が豊かな、南極半島の調査に行くのだ。

[画像のクリックで拡大表示]

 もともと、何もこうやって1シーズンに2回も南極に行くつもりなどなかったのだが、色んな事柄が重なり絡み合ってどうにもこうにもこうなってしまった。実は、スペイン隊への参加は昨年度の予定だった。けれど、スペインの国の財政状況が悪化した影響で、バイヤーズ半島キャンプ隊の南極行は出発直前だった2013年の秋になって取りやめとなった。

 そんな矢先の冬、「アンターセー湖に行かないか?というか、お前も行くぞ。出発は次の10月中旬ころだから」とデイルからの誘いがあった。内陸の山岳地帯にあるアンターセー湖なんて、滅多に行ける場所じゃない・・・このチャンスを逃すなんて大馬鹿ものでしかない!と思った私は、瞬時に返事をした。「もちろん!」と。けれどバイヤーズ半島のことは心に引っかかっていた。スペイン側から「今シーズンはダメだったけど、来シーズンは絶対行けるから!」と言われていたのだ。悩んでいた私だったが、最終的にいいことを思いついた。

「そうだ、どっちも行こう」 と。