第7回 湖底はまるでSFの世界

 氷の下は、その不思議な縦模様を作り出す小さな空孔が無数に開いていて、まるで青いシャンデリアのようだ。よく見ると鏡のように反射している場所がところどころにあり、近寄ってみると、ゆらゆらと氷に貼り付くように浮いている大きなガスの塊だった。湖底の生き物たちの活動によって発生したガスだろう。

4mの氷の下には無数のストローのような空孔が開いていた。ガスの塊が浮いているのが左奥に見える。
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 光合成生物による酸素ガス、メタン生成菌によるメタンガス・・・生命活動があまり活発でないこの環境では生物がそれほど大量にガスを発生するとは考えられない。長い時間分厚い氷で覆われることによってこんなにも大きくなるまで蓄積するのだろう。時折、その泡の塊はダイブホールに吸い込まれるように、この閉じられた世界から外界へと逃げていくのが見えた。あの泡は一体いつからこの氷の下にとどまっていたのだろう。

「氷の下まで来た。これから湖底20mに向かう」
「OK。呼吸もゆったりしていて、いい感じだ」

 私は潜水前にナーバスになっていたことなど忘れていた。機材がモコモコしていて少し動きにくくはあるが、すっかりいつもの調子を取り戻していた。

紫色の湖底

 水深が深くなるにつれ、水の色がどんどん深く濃い青になっていった。分厚い4mの氷を通った光だからだろうか、水が信じられないくらい透明だからだろうか、いつも潜る南極の湖の水の色とは違っていた。この恐ろしく静かで、透き通った群青色は、なんというか、行ったことはないけれど、大気圏から宇宙空間へと入っていく時はきっとこんな色だろうというような色だ。

 水深9m、10m、11m、12m・・・ダイブコンピューターの表示を見ながらゆっくりと湖底に向かっていく。湖底が徐々に見えてきて、平面から立体的に浮かび上がってきた。

「わあーっ!!!なんだこれーっ!!!?」

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