第66回 眠りながらも目覚めてる!? 半球睡眠とは何か?

 それにしてもトリ君はニワトリのくせに半球睡眠を知らないとは驚きだなぁー。ごく端的に表現すれば、左右の大脳半球が片方ずつ交代で眠る現象を半球睡眠といいます。実際に脳波を測ってみると、文字通り片側は覚醒時の脳波、反対側は睡眠脳波が同時に出現しているんだ。

 なんでそんなヘンテコな睡眠があるんだろ。

 いろいろな理由で「ぐっすり寝てはイケない状況」におかれた動物たちの生き残り戦略として進化した機能だと考えられているんだよ。

 多くの野生動物にとって捕食者(外敵)からいかに身を守るかが大事だよね。特に1カ所でじっとしている睡眠中は危険な時間帯。だから動物は安全な巣の中で身を固めた姿勢で睡眠をとるのが基本です。腹を出した無防備な状態で爆睡している人やネコやイヌをみるとつくづく「野生を忘れてるな」「平和でいいな」と感じるよ。

 その点、半球睡眠をとる動物では大脳皮質の半分は起きている状態なので、周囲の状況が全く認識できなくなる全球睡眠とは違って、外部環境に注意を払いながら安全に眠ることができるんだ。もっと言うと、いろんなことをしながら眠れます。

(イラスト:三島由美子)
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 なんかよく分からないけどウラヤマシイ……。私なんかいったん寝てしまうと地震があっても気づかずに朝まで爆睡です。腹は出していませんが。
 いったい半球睡眠はどのような動物にみられるんですか?

 半球睡眠をする代表的な動物と言えば渡り鳥が有名だね。アマツバメ、イソシギ、カモメなどでは半球睡眠があることが研究で明らかになっている。また、イルカやクジラなどの海洋哺乳類でも半球睡眠がみられるよ。

 何千キロ、何万キロも飛行する渡り鳥だけど、何日間も眠らないで飛び続けるわけにはいかない。けれど、両半球とも睡眠状態になると墜落してしまうよね。群れをなして渡りをするときにはお互いにぶつからないように距離を保つ必要もある。イルカやクジラの場合は呼吸のために定期的に水面に浮き上がるのに半球睡眠が便利です。

 イルカは昔から半球睡眠の研究に貢献してくれていて、1970年代に当時のソビエト連邦のモスクワ大学にいた睡眠研究者がイルカの脳波を測定したことで半球睡眠が初めて実証されたんだ。

 半球睡眠の時は、寝ている脳の反対側の眼が閉じているので、脳波を測らなくても分かるときもあるんだよ。動物園のイルカやペンギンが片目を閉じているのはウィンクではなく半球睡眠のときだね。

 そんな便利な半球睡眠なら、すべての動物にあったらいいのに。

 ほんとだよね。私も仕事や原稿の締め切りが近くなると、半球でも1/4球でもよいから働いてくれないかなと思う時があります。

 半球睡眠がある動物とない動物がいる理由はよく分かっていないし、いまだに詳しいメカニズムも不明のままなんだ。

 ちなみにトリ君、キミもトリの端くれならば半球睡眠ができるんじゃないの?

 ギクッ。自分では意識していないんだけど。。。

 あはは。

 半球睡眠をとる動物も保護された飼育環境で生活していると半球睡眠が減るとも言われているからね。トリ君も今ではすっかり熟睡派かな。

 ニワトリも含めて多くの鳥類で半球睡眠があると言われているけれど、脳波を使ってキチンと実証されている例は思いのほか少ないんだ。