第65回 男性にも読んでほしい、女性ならではの睡眠障害

 50歳前後になるとエストロゲンが低下し閉経(更年期)を迎える。更年期女性の約2割が更年期障害に悩まされる。ほてりやのぼせ、多汗などの症状(血管運動神経症状と呼ばれる)のほか、6割以上で入眠困難や中途覚醒、熟眠困難など何らかの不眠症状がみられる。

 不思議なことに更年期障害の不眠では睡眠ポリグラフ検査で測定した睡眠状態がさほど悪くないことが多く、その割に睡眠に関する不満足感(主観症状)が強いという特徴がある。更年期の女性では睡眠をはじめとした種々の身体不調に対して過敏になっているという側面もあるようだ。

 また、更年期女性では産褥期と同様に精神疾患のリスクも高い。更年期障害で病院を受診した女性の約25%で気分障害(うつ病)が、約10%で不安障害が見られる。このようなメンタルヘルスの問題で悩んでいる女性は精神症状よりもむしろ不眠や眠気をメインに訴えることもあるため注意が必要である。「不眠あり=不眠症、ではない」「眠気あり=睡眠不足、ではない」という教訓を忘れてはならない。

 このように、女性はさまざまなライフステージで女性特有の睡眠障害に悩まされているのである。晩酌を済ませて洗い物も手伝わない夫が隣で大イビキをかいて安眠妨害したのでは奥様のイライラに拍車がかかることは間違いない。ぜひ、先出の私の知人研究者のような「スキル」を身につけていただきたいものである。

 早いものでこれが年内最後の回になりました。
 来年はトリ年です。年男のトリ君とともにお正月にまたお目にかかります。
 みなさまよい年末年始をお迎えください。

つづく

三島和夫

(イラスト:三島由美子)

三島和夫(みしま かずお)

1963年、秋田県生まれ。秋田大学大学院医学系研究科精神科学講座 教授。医学博士。1987年、秋田大学医学部医学科卒業。同大助教授、米国バージニア大学時間生物学研究センター研究員、米国スタンフォード大学医学部睡眠研究センター客員准教授、国立精神・神経医療研究センター睡眠・覚醒障害研究部部長を経て、2018年より現職。日本睡眠学会理事、日本時間生物学会理事など各種学会の理事や評議員のほか、睡眠障害に関する厚生労働省研究班の主任研究員などを務めている。これまでに睡眠薬の臨床試験ガイドライン、同適正使用と休薬ガイドライン、睡眠障害の病態研究などに関する厚生労働省研究班の主任研究者も歴任。『8時間睡眠のウソ。日本人の眠り、8つの新常識』(川端裕人氏と共著、集英社文庫)、『睡眠薬の適正使用・休薬ガイドライン』(編著、じほう)などの著書がある。近著は『朝型勤務がダメな理由』。