第84回 あなたの風邪は寝不足から? 睡眠と免疫力の深い関係

 ちょうどインフルエンザワクチンを接種する季節だが、認知症やがん患者の介護者ではワクチン接種後にも抗体がなかなかできないという研究報告もある。老老介護で認知症の夫の介護をしている妻がインフルエンザで先にダウンすることも珍しくないのは、ストレスに加えて睡眠不足やトイレ介助など夜間に何度も起こされることと無関係ではないだろう。

 ところが、不思議なことに、1日や2日程度のごく短期間の徹夜や睡眠不足の場合にはむしろ免疫力が上がるという報告も多い。

 例えば、我々が以前行った実験でも、一晩の徹夜によってNK細胞活性がむしろ上昇することを確認している。どうやら、夜間に鎮まるはずの交感神経が断眠によって興奮し、NK細胞活性を増大させるノルエピネフリンなど神経伝達物質が増加することと関係しているようだ。

 NK細胞は、がん細胞が産生されたり体内にウイルスが侵入したときに免役システムの中で最初に対応する非常に重要な免疫細胞である。そのため、昼行性動物のNK細胞活性には怪我などにより感染するリスクが高い日中にその活性が高まり、逆に休息する夜間には低くなるという日内リズムがある。

 ところが生物である限り、時には夜を徹して活発に動き回り、獲物を追う、外敵から身を守るなどしなくてはならないこともある。そのような時には生体を守る最前線部隊であるNK細胞は夜間だからといって休んではいられないのだろう。

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