第109回 「朝立ち」の科学

(イラスト:三島由美子)
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 男であれば友人らと「朝からビンビンだぜ」の類いの話を一度や二度はしたことがあるだろう。師走で忙しい時期に下世話な話で恐縮だが、今回はビンビンと睡眠の深い関係についての科学的なお話なのでお付き合いいただければ幸いである。

 睡眠はレム睡眠とノンレム睡眠に分けられる(第16回「「夢はレム睡眠のときに見る」のウソ」 参照)。俗に、「ノンレム睡眠は脳の休息、レム睡眠は体の休息」のためにあるなどと言われるが、これは睡眠の役割を単純化しすぎである。本カラムでもこれまで何度も取り上げてきたように、睡眠とは単に体を横たえて休んでいる静の状態ではなく、記憶の固定、細胞の修復、免疫調節など生体内の各所で固有の活動が活発に、かつ同時並行で行われている。

 大脳皮質が発達した霊長類や人間では深いノンレム睡眠が長いのが特徴で、睡眠中でもとりわけ深いノンレム睡眠中には脳活動が全般的に不活発になり、脳血流量や代謝量も低下する。ノンレム睡眠は深部体温(脳の温度)の低下と連動して出現する、つまり脳のクールダウンが主要な目的の一つと推測されることなどから、「ノンレム睡眠は脳の休息」という表現は、その機能の一部を切り取った形にはなるが間違いではない。

 一方で、「レム睡眠は体の睡眠」というのはレム睡眠の役割の一面のみしか表していない。確かに、レム睡眠中には、鮮明な夢を見るなど脳の活動は覚醒時に近いほど活発でありながら、体の骨格筋(自分の意志で動かせる四肢や体幹の筋肉)は弛緩して寝返りも打てず見かけ上は体が静止した状態になる。

 しかし、体内環境は大いに異なる。ノンレム睡眠中には血圧、心拍数、呼吸数は低下してサイレントな状態になるのに対して、レム睡眠中には交感神経が活発になり、血圧や心拍数は乱高下し、呼吸は乱れるなど「自律神経の嵐」と表現されるように「体の休息」とはほど遠い状態に陥る。そして、男性のシンボルである陰茎もまたレム睡眠中に見事に目覚めて屹立(勃起)するのである(実は女性でも陰核が膨大するなど類似の現象が生じるらしいのだが話しがややこしくなるので、今回は男性に限定して解説する)。

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