第131回 左脳は「夜の見張り番」、“枕が変わると眠れない”わけ

 米国ブラウン大学の研究者らが以前行った興味深い研究で、第一夜効果には左脳の覚醒度アップが関わっていることが示唆されている。

 普段私たちが目覚めているとき、ある物を集中して見たり、作業をしているときには、脳の視覚野や運動野と呼ばれる担当脳領域が活性化し血流が増加する。ところが何かを考えたり、物事に集中しておらず、ぼんやりとした安静状態になった時にむしろ活性化する脳領域が幾つか存在し、相互に活動が関連(機能結合)していることが明らかになっている。これらは“デフォルトモード・ネットワーク”と呼ばれており、漠然と空想や想像したり、物事を思い出したりするなどの脳活動に関わると考えられている。

デフォルトモード・ネットワークに関わる脳部位
デフォルトモード・ネットワークに関わる脳部位
ほかにも、角回、側頭頭頂接合部、海馬、脳梁膨大後皮質などもデフォルトモード・ネットワークに含まれる。(画像提供:三島和夫)
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 先に紹介したブラウン大学の研究者らが右利きの被験者に1週間空けて実験室で2回眠ってもらい睡眠の深さを調べたところ、最初の実験夜、すなわち第一夜には左脳(脳の左半球)のデフォルトモード・ネットワークで徐波睡眠(深いノンレム睡眠)が減っていることを見いだした。このことは新しい環境で眠った時には左脳は右脳に比べて覚醒度が高い状態であることを示している。

 実際、睡眠中の被験者に耳慣れない音をイヤホンで聞かせると左脳の脳波が大きく反応する。また音が聞こえたら指をタップするように事前に指示しておき、徐波睡眠中に徐々に音を大きくすると第一夜の方がより低音量で反応し、かつ特に耳慣れない音を右耳に聞かせた(左脳の聴覚領域を刺激した)時により素早く反応することが明らかになった。

 このような実験結果から研究者達は、就寝環境が安全になって爆睡できるようになった現代人にも、危険を回避するために睡眠中に周囲の出来事に目を見張らせる機能(ナイトウオッチ機能)が残っており、特に左脳のデフォルトモード・ネットワークが重要な役割を果たしていると主張している。

 先にも書いたようにデフォルトモード・ネットワークは空想、想像などこれから起こり得る出来事を予測する機能を持つとされる。デフォルトモード・ネットワークが睡眠中にも少なくとも部分的に作動していることは、慣れない環境でリスキーな夜を過ごす際の見張り番としては適任なのかもしれない。

 ところで、なぜ右脳ではなく左脳のデフォルトモード・ネットワークが活性化したのだろうか? この疑問に対する明確な回答はまだ用意されていない。ただし、研究者らは幾つかの可能性があるとしている。

次ページ:機能的な理由のほか、左右が交代制の可能性も

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