第38回 不眠症を慢性化させる「3つのP」とは?

(イラスト:三島由美子)
(イラスト:三島由美子)
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 心配事で眠れない、大きな地震があって不安で眠れぬ夜を過ごした、などの経験は誰しも持っている。ただし、このような急性ストレスによる不眠は数日から長くて2週間ほどで改善する。不安な時に眠れないのは当たり前、危険な状況に即座に対応できるよう覚醒度が高まるために生じる一種の正常な生体反応(警告反応)なのだ。

 不眠の多くが一過性であることを示す端的なデータがある。東日本大震災の時に自分が主任研究者をしていた厚労省研究班で日本人の睡眠状況についての緊急調査を行う機会があった。震災直後は不眠に悩む人が急増したが、震災1カ月過ぎにはその数はかなり減少し、1年後には被災地でも平時とさほど変わらぬ頻度まで低下していた。

 このように睡眠機能には大きなレジリアンス(回復力、復元力)があるのだ。ところが、一部の人ではある理由で不眠が長引いてしまうことがある。そして一度こじらせるとなかなか治らないのが不眠のやっかいな点である。ある理由というのが今回のテーマの「3つのP」である。

 本題に入る前に予備知識を幾つかご紹介する。

 まず不眠をこじらせるのに要する期間について。

 個人差が大きいがおおよそ1カ月から数カ月と考えられている。たとえば、1カ月以上持続する不眠に陥ると自然に治ることは少なくなり、その70%では1年後も不眠が持続し、約50%では3〜20年後も不眠が持続していたという調査結果もある。不眠には後戻りできないルビコン川が存在するのである。

 次に不眠症の診断基準について。

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