第63回 シエスタとるなら昼寝は短めに

 ところで、シエスタsiestaの語源はラテン語のhora sexta(sixth hour、6時間目)である。つまり起床してから6時間後のお昼過ぎの休憩というわけである。もともと眠気には2相性の日内変動があって、ちょうどシエスタの時間帯(13時〜16時)あたりに眠気が強まる(第21回 「「睡眠禁止ゾーン」って何?」)。シエスタで眠りやすいのはこのような眠気の性質も利用している。

 この昼食後の眠気(post-lunch dip)が生じるメカニズムは実はよく分かっていない。12時間周期の生体リズムの影響、食後の副交感神経活動の高まり、覚醒に関わる脳内ホルモンの変動など諸説あるが、睡眠不足も一役買っているらしい。

 というのも、「健康な人」でも、実験的に普段よりも1時間ほど長く眠らせると昼食後の眠気はほとんど無くなるからである。この辺の話は前回の「潜在的睡眠不足」にも通じる。言い換えれば、シエスタでたっぷりと眠れる人は睡眠不足とシエスタの悪循環にハマっている可能性がある。

(イラスト:三島由美子)
(イラスト:三島由美子)
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 スペインをはじめ多くの国々で取り入れられているシエスタだが、シエスタ中に長く寝過ぎると健康を害する可能性があることが多数の疫学調査から明らかになっている。

 例えば、シエスタ中に長い昼寝をとる習慣がある人では、シエスタでも昼寝をしない人に比べて心筋梗塞や脳梗塞などによる死亡危険率が高くなる。特に昼寝の長さが大事で、昼寝が1時間を超えると死亡危険率が急増し、2時間のグループでは昼寝をしない人の約5倍にまで高まるなどの調査結果がある。

 長すぎる昼寝は認知症の発症率にも関わっている。1時間以上の午睡を取る高齢者ではアルツハイマー病の発症率が死亡危険率と同様に2倍程度にまで高まると報告されている。

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