第119回 徹夜明けに目が冴えたり爽快感を覚えたりするのはナゼなのか

 このように多数の生体機能が腕時計の指令で連動して働くことで、起床直後から眠気を解消し、日中から睡眠禁止ゾーンにかけてハイパフォーマンスを発揮できるよう後方支援してくれているのだ。

 睡眠禁止ゾーン終了後には覚醒シグナルがオフになるため、徹夜タイムに突入すると一気に眠気が強まるが、翌朝は再び腕時計によって再度覚醒シグナルが高まる。これが徹夜明けにもかかわらず眠気が一時的に解消されるメカニズムなのである。

 徹夜明けに眠気が軽くなるだけではなく、時には気分がハイになることさえある。実はこの気分の高揚感は眠気が取れたことだけが理由では無い。古くから知られているうつ病の治療の一つに断眠療法という治療があり、徹夜自体に気分を持ち上げる効果があることが証明されている。ここら辺は第40回「帰ってきた断眠療法―眠らずにうつ病を治す」で紹介したので興味があればご一読いただきたい。

 とはいえ、腕時計による覚醒シグナルは徹夜明けの眠気に対抗する急場しのぎに過ぎない。徹夜で溜め込んだ砂時計の砂を除去するには睡眠を取るしかないからである。

 実際、徹夜したときのパフォーマンスの変動グラフを見ても、明け方よりは回復しているとは言え、しっかり眠った後の同時刻のそれと比べて低いことが分かる。徹夜の時の眠気解消に運動するなど気分転換をすれば一時的に眠気は取れるが、残念ながらパフォーマンスは回復しないことも明らかになっている。やむを得ない事情があるとき以外は徹夜仕事や一夜漬けは避けた方が無難だろう。

つづく

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三島和夫(みしま かずお)

1963年、秋田県生まれ。秋田大学大学院医学系研究科精神科学講座 教授。医学博士。1987年、秋田大学医学部医学科卒業。同大助教授、米国バージニア大学時間生物学研究センター研究員、米国スタンフォード大学医学部睡眠研究センター客員准教授、国立精神・神経医療研究センター睡眠・覚醒障害研究部部長を経て、2018年より現職。日本睡眠学会理事、日本時間生物学会理事など各種学会の理事や評議員のほか、睡眠障害に関する厚生労働省研究班の主任研究員などを務めている。これまでに睡眠薬の臨床試験ガイドライン、同適正使用と休薬ガイドライン、睡眠障害の病態研究などに関する厚生労働省研究班の主任研究者も歴任。『8時間睡眠のウソ。日本人の眠り、8つの新常識』(川端裕人氏と共著、集英社文庫)、『睡眠薬の適正使用・休薬ガイドライン』(編著、じほう)などの著書がある。近著は『朝型勤務がダメな理由』。