第119回 徹夜明けに目が冴えたり爽快感を覚えたりするのはナゼなのか

 さて、この眠気の強さやパフォーマンスの低下は明け方に向けて文字通り一直線に強まり、ちょうど覚醒してから24時間前後のあたりにピークを迎える。徹夜をしていて明け方に強い睡魔と闘った経験をお持ちの方も多いだろう。翌日が休日ならば、この眠気に乗じて明け方から昼過ぎまで爆睡することになる。

起床してから翌日まで睡眠を取らずにパフォーマンスを測定した結果。覚醒してから約24時間後にパフォーマンスは最低となるが、その後覚醒シグナルのために徹夜明けにもかかわらず回復する。(Dawsonらのデータ(Nature,1997)から作成)(画像提供:三島和夫)
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 生体では、「体内時計」と「睡眠恒常性」の2つのシステムが互いに関連し合ってその時刻時刻に眠るか目覚めるかが決められる。体内時計は「腕時計」、睡眠恒常性は「砂時計」と読み替えると分かりやすい。

 生体に生じる睡眠欲求は「砂時計」型のメカニズムで強まる。すなわち先行する覚醒時間の長さに応じて砂時計の砂が下に溜まるように疲労が蓄積し、眠気が強まる。生体内で砂時計の砂に当たるのが疲労物質や睡眠物質と呼ばれるもので、数多くの候補物質がある(第57回「眠気の正体」)。

 ところが、仮に眠気が「砂時計」だけで決められているならば、覚醒直後に最も眠気が少なく、その後時間経過とともに強まり、アフターファイブは眠気のためにエンジョイできなくなる。徹夜など至難の業で、ましてや翌朝に眠気が一時的にせよ解消する(溜まった砂が消える)などという現象は生じない。ところが実際にはそうではない。

 我々の体内に、日中にパフォーマンスを維持して活力ある生活を送れるようにするシステムが存在するためで、それが腕時計(体内時計)である。朝に起床してから溜まる一方の砂時計に抵抗すべく、覚醒度を高める生体シグナルを発揮するようアラームがセットされている。

 覚醒シグナルの正体は単一の生体現象ではない。幾つか例を挙げよう。日中時間帯には脳内で覚醒を促す多数の神経伝達物質、例えばヒスタミン、ノルアドレナリン、アセチルコリンなどの活動が活発になる。また、覚醒度は脳の温度とともに高まるが、これは明け方に最も低く、日中を通して高まり、正に睡眠禁止ゾーンで一日の最高温度に至る。強い覚醒作用をもつ副腎皮質ホルモンも夜間は低く抑えられ、起床時刻に先駆けて一気に分泌が始まり、午前中にかけて最も多く分泌される。

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