第61回 脳の掃除は夜勤体制

 細胞外に老廃物を排出しても、そのまま近くに放置していてはマズイ。ゴミを集積し、焼却炉へと運ぶ必要がある。体内には細胞外に排出された老廃物を運搬し焼却するシステムがあり、その主なルートがリンパ系システムである。

 細胞と細胞の間(細胞間隙)は血管から漏出した体液(血漿成分)で満たされている。細胞から排出された老廃物を含む体液はリンパ液となって全身に張り巡らされたリンパ管に入り、徐々に太いリンパ管へと合流し、最終的には血管に流し出される。その間、リンパ液や中継地であるリンパ節に存在するマクロファージなどの白血球によって老廃物は取り込まれ(貪食され)、細胞内の酵素などで処理される。

 ちなみに、臓器にできたがん細胞もリンパ流に入り込みやすい。中にはリンパ球の攻撃を凌いで生き残り、遠くまで流されることがある。つまりがん細胞が遠隔転移する際の通路となる。そのためがん手術の際には、念のために病巣近隣のリンパを除去(郭清)することが多い。

 このように体の老廃物を排泄・処理するリンパ系システムは全身に張り巡らされているが、不思議なことに脳内ではリンパ系システムが見つかっていなかった。脳神経細胞からも日々多量の老廃物が排出されているにもかかわらず、どのようにして脳内から老廃物を除去しているのかナゾのままだったのだ。

 冒頭で紹介したロチェスター大学の研究者たちは、脳内のリンパ系システム(グリンパティックシステム、glymphatic systemと命名された)の詳細な構造と機能を世界で初めて明らかにしたのだが、とりわけ睡眠研究者の耳目を引いたのは、このグリンパティックシステムが睡眠中に非常に活発に働く点である。

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