第129回 睡眠を妨げる夜の頻尿、悪循環しがちな理由と対処法

 軽い尿意でも目覚めてしまうようになる原因の一つが、睡眠中の感覚刺激に対する覚醒閾値(いきち)の低下である。覚醒閾値とは睡眠中の人を目覚めさせるのに必要な刺激の強さ、と言い換えてもよい。例えば、睡眠ポリグラフ検査で睡眠の深さをモニターしながら寝てもらい、同じ深さの睡眠段階にある時に音を聞かせて覚醒反応が生じるのに必要な音量を計測すると、年齢とともに低い音量でも容易に覚醒するようになる。

 睡眠中には周囲の音や、温度、触覚、臭いなどの感覚刺激がそのまま大脳に伝わり睡眠が中断してしまわないようにフィルターをかける機能が働いている。脳内の視床と呼ばれる部位がその役割を果たしている。視床によるフィルター機能は覚醒中にも働いていて、例えば何かに集中しているときに周囲の物音が耳に入ってこない(実際には入っているが大脳で意識されない)のも視床フィルターのおかげだとされる。高齢者、特に不眠傾向のある人では睡眠中に視床フィルター機能が低下しているため、軽い尿意でも覚醒しやすくなっていると考えられている。また、当然ながら深い睡眠に比べて浅い睡眠では覚醒閾値は低い。加齢とともに浅い睡眠が増加するため必然的に覚醒しやすくなる。

 以上をまとめると以下のようになる。

高齢者ではもともと膀胱の蓄尿機能が低下して尿意を感じやすい
+睡眠が浅くなり覚醒閾値が低下している。

「トイレに行っておかないとまた目覚めてしまうのでは……」という不安から軽い尿意でもトイレに!

トイレまで歩くことでますます目が覚めてしまう。

その後の眠りがさらに浅くなる。

……

(画像提供:三島和夫)
(画像提供:三島和夫)
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 尿意と目覚め。どちらが鶏で卵なのか……人によって異なるが、いずれにせよ鶏→卵→鶏の連鎖(悪循環)を生んでいることは間違いないようだ。

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