第129回 睡眠を妨げる夜の頻尿、悪循環しがちな理由と対処法

(イラスト:三島由美子)
(イラスト:三島由美子)
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「1回だけの人が約40%、2回の人は約35%、3回以上の人も15%いる」

 これは、70代男性が普段、夜に寝床についてから朝起きるまでに排尿する(トイレに行く)回数である。数値は国立長寿医療研究センターが愛知県県内の中高年の住民を対象に行った調査結果から引用した。60代男性の80%、70代の90%、80代ではなんとほぼ全員が少なくとも夜中に1回は目を覚まし、尿意を催してトイレに向かっていたという。女性は男性よりも各年代とも10%ほど低い割合であったが、それでもかなりの頻度だと言える。

 睡眠の深さには約1.5時間のサイクルがあるため、そのタイミングに合わせて尿意による目覚めが生じることが多い。しっかりトイレを済ませて23時頃に就寝しても、3時間後の午前2時過ぎに1回目、さらに4時頃に2回目の目覚めがあり、そのたびに尿意を感じてトイレに向かう。最後に明け方5時過ぎに再び尿意を感じて目覚めてしまうと、あとは寝るのを諦める、などがその典型例だ。排尿回数が増えてくると寝ついてから1時間半後(まだ午前0時前)に目を覚ましてしまうこともある。これでは全く寝た気がしない。

 夜間頻尿の原因について泌尿器科のドクターと話しをすると、尿意が強いから目覚めるのか、眠りが浅いからちょっとした尿意でも目が覚めてしまうのか……必ずと言ってよいほど「鶏と卵」論争になる。ご多分に漏れずこの疑問についても明確な答えがない。

 もちろん、明らかな泌尿器科疾患のために睡眠が障害されるケースもある。例えば、尿量調節をするホルモンの異常や糖尿病(血液中の糖分を多量の尿と一緒に排泄しようとする)では、夜間に尿量が非常に多くなって膀胱で溜めきれずに目が覚めてしまう。

 また尿量は正常でも頻尿になることがある。年齢とともに膀胱の筋肉量が減り組織も固くなると、収縮力や柔軟性がなくなり尿を溜めておく力が低下するためだ。特に過活動膀胱や前立腺肥大症などの病気があるとその程度が著しくなる(膀胱蓄尿障害)。これら原因がはっきりしている夜間頻尿については適切な治療をすることで睡眠障害も回復することが多い。

 ところが、泌尿器科的に明確な原因が見当たらないのに何度も目を覚ます人がいる。トイレに行っても尿量はさほどでもない。この程度の尿なら日中であれば気にならないのに……。夜間頻尿で悩む方の中にはこのようなタイプが多く、むしろ多数派かもしれない。

「若い頃は朝までぐっすり眠り、“膀胱がパンパン”になってようやく目が覚めていたのに」という嘆きをよく耳にする。尿意だけではない。若い頃は、ベッドパートナーが大きなイビキをかこうが、寝相(ねぞう)が悪くて蹴飛ばされようが目を覚まさなかった人でも、年とともに軽い尿意や些細な物音でも目を覚ますようになる。

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