第34回 睡眠の定義とは何か?―「脳波睡眠」という考え方

しっかりした目覚め状態から深い睡眠状態まで主体となる脳波の周波数帯域がダイナミックに変化する。(JasperとPenfieldらのテキストから引用)(イラスト:三島由美子)
しっかりした目覚め状態から深い睡眠状態まで主体となる脳波の周波数帯域がダイナミックに変化する。(JasperとPenfieldらのテキストから引用)(イラスト:三島由美子)
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 脳波とは脳が発生する微弱な電気活動を増幅して記録したもので、周波数帯域ごとにδ(デルタ波:1〜3Hz)、θ(シータ波:4〜7Hz)、α(アルファ波:8〜13Hz)、β(ベータ波:14〜30Hz)に大別される。睡眠でも覚醒でも複数の帯域の脳波が混在するのが普通だが、覚醒度や睡眠深度に従って主体となる脳波帯域が変化する。

 たとえば、リラックスした閉眼安静時にはキレイな正弦波様のα波が主体であるが、しっかり目覚めている時はβ波が増加し、緊張状態になるとα波がほとんど抑えられてβ波が主体になる。

 そして睡眠もまた「覚醒以外の状態」として脳波で定義できるようになったのである。

 睡眠状態に入ると、α波は徐々に減少して波形も崩れてくる。代わりにθ波が主体となって、他にもいくつかの特徴的な波形の脳波が出現するようになる。睡眠がさらに深まるとδ波が目立つようになる……そして脳波パターンや筋活動によって睡眠の深さやレム睡眠が判定されるのである。

 つまり、現在の科学や医学で睡眠と呼んでいる意識状態は脳波の周波数帯域で定義されているのである。人の睡眠が「脳波睡眠」とよばれる由縁である。

 一見もっともらしい脳波睡眠の定義だが批判もある。

 ここまで読んでいただけばお分かりだと思うが、脳波睡眠の周波数や振幅の基準は睡眠の本質的な理解のもと科学的根拠に基づいて決めたわけではない。被験者が「眠っているように見える(起こしてしまうので被験者には聞けない)」時の脳波を多数計測して共通する所見をとりまとめた「後付け基準」なのだ。

 刺激にも反応せず明らかに深く眠っている、会話などをして明らかに目覚めている、このような時の脳波所見には異論が無い。しかし、ウトウトまどろんでいる睡眠と、覚醒の境界領域の脳波については現在でも諸論がある。現在の基準は、当時の大御所たちがエイヤッで決めたというのが実情だ。

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