第33回 補講:知ってるようで知らない時差ボケ対策

 ナイスクエスチョンです。もちろん他の子時計のズレも影響します。ただ、睡眠担当の子時計のズレが旅行者にとって一番悩ましいってこと。

 体内時計のシステムは二段構造になっていて、最初に親時計である視交叉上核が時刻情報を発して、次いで子時計たちが受け取った時刻情報に合わせてさまざまな生体機能リズムを作り出していることは前回も説明したね。オーケストラで例えれば指揮者と演奏者の関係です。

 子時計が担当する生体リズムの中には睡眠のほか、血圧や脈拍、消化吸収、免疫、ホルモンなど臓器や生体機能ごとに担当する子時計がある。どの子時計がテンポを乱しても演奏が台無しになるけど、旅行先で一番辛いのが眠気や不眠なので、一般的には時差ボケと言えば睡眠調節担当の子時計(睡眠子時計)と現地の昼夜リズムのズレによって生じる睡眠問題のことを指すことが多いんだ。

 じゃあ、胃腸症状が一番苦しい旅行者にとっては胃腸子時計のズレが原因ってことですか?

 その通り! 時差ボケの症状やその原因は人それぞれ異なるってことです。

 睡眠子時計っていう名前は分かりやすいんだけど、具体的には何なのかな?

 睡眠調節に関わる生体機能には、自律神経、ホルモン、脳内神経伝達物質、ひいては特定の神経細胞の活動など多数あってそれぞれ日内リズムを刻んでいるんだ。その1つ1つが睡眠子時計なんだよ。これら睡眠子時計が現地時刻からズレている限り、すなわち外的脱同調が解消されない限り不眠や眠気は続くんだ。

 睡眠子時計はどうやって計るんだろ。

 睡眠子時計をすべて計るのは不可能だし、現地時刻への同調速度もまちまちだけど、一番重視されている睡眠子時計はメラトニンと深部体温リズムだね。人でも測定することが可能で、睡眠に与える影響も大きいからなんだ。オーケストラで言えば第一バイオリンのコンサートマスターといったところかな。

 外的脱同調のメカニズムと対処法を理解するために、1周24時間の陸上競技用トラックを走るウサイン・ボルト、ヒツジ君、トリ君を想像してみて(次ページの図)。ボルトが親時計だとすると、ヒツジ君が睡眠子時計、そしてトリ君がその他の子時計って役割分担だね。