第107回 短時間睡眠で済む遺伝子が発見された

(イラスト:三島由美子)
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 最近、神経科学の専門誌「ニューロン」の2019年9月号にショートスリーパーの遺伝子が見つかったという報告が載った。その詳細は後ほど紹介するとして、まずショートスリーパーとは何か、から始めよう。

 ショートスリーパーとは、簡単に表現すれば短時間睡眠で生涯を健康に過ごすことができる人だ。睡眠障害の国際基準でもショートスリーパーは「正常範囲内だが異型(標準から大きく外れている)」な睡眠パターンとして取り上げられている。「疾患」ではなく「異型」と表現されるのは、短時間睡眠によって健康上の問題が生じないためである。

 困ったことに、ショートスリーパーと判定する絶対的な基準は設けられていない。つまり「睡眠時間が何時間未満ならショートスリーパー」という具体的な数値がない。というのも、脳波計測など信頼のおける方法で実質的な睡眠時間を長期間にわたり測定した「真のショートスリーパー」がどれくらいの頻度で存在するのか多人数で調べた疫学研究がないためである。一応の目安として成人の場合、典型的には「睡眠時間が5時間未満」とされている。最近の診断基準では「6時間未満」というものもある。加えて、日中の眠気がなく(もちろん週末の寝だめも無い)、睡眠不足による心身の不調が一切無いことが条件になっている。

「えー、5時間でショートスリーパー? 自分は毎日4時間くらいしか寝ていない」などと寝不足自慢をする人がいるが、週末の寝だめや、昼寝、夕食後のリビングでのうたた寝などもすべて含めて、正味5時間以下の睡眠で充足される人は極めて少ないと考えられている。加齢とともに必要睡眠時間は短縮し、70代では5時間程度の睡眠で生活できている人もいるが、ショートスリーパーは若い頃から睡眠時間が一貫して短い。このような真のショートスリーパーは人口の1%以下であることはまず間違いないだろう。

 私自身も睡眠研究を始めて長いが、ほぼ間違いなくショートスリーパーだろうと思われる人は数名しか出会ったことがない。ある調査に応募してきた人たちで、睡眠時間を客観的に計測できるアクチグラフで1カ月ほど調べても、確かに5時間前後の睡眠で元気に生活していた。

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