内的脱同調はナゼ時差ボケの原因になるのだろうか。たとえば、食事を例に取ると、腸管の動き、消化酵素、血糖調整のためのインスリンの分泌、栄養素の吸収、排便など一つ一つに日内リズムがあり、それぞれ適度な時間差で効果的に連動し健康を維持している。相互の時間関係がおかしくなると不調になるのは当たり前なのである。

 さて、1週間の出張をこなして帰国することになったK氏。ジョン・F・ケネディ国際空港を正午発の便に乗り込んだ。帰路は14時間のフライトである。成田空港着は日本時間で午後3時。しかし睡眠リズムが概ねNY時間に同調しているK氏の体感時刻は深夜2時。これから自宅のベッドに辿り着くまでしばらく眠気を我慢しなくては……ふー。

 日本に戻ったK氏の体内では何が起こっているだろうか。

 親時計は午後の日差しを浴びてウサイン・ボルト並のスピードでリセット街道驀進中である。睡眠担当の子時計も駆け足で追随。その他多くの子時計たちも方向転換したが、その歩みは遅々としている。親時計と子時計たちが日本時間で再び外的にも内的にも再同調するにはまだしばらくかかりそうである。

 足の速い子、遅い子をまとめて引率するのは容易でないが、できるだけ列を乱さないように海外出張をこなす方法はないだろうか。次回、補講で考えてみたい。

つづく

『朝型勤務がダメな理由』
三島和夫著

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三島和夫

(イラスト:三島由美子)

三島和夫(みしま かずお)

1963年、秋田県生まれ。秋田大学大学院医学系研究科精神科学講座 教授。医学博士。1987年、秋田大学医学部医学科卒業。同大助教授、米国バージニア大学時間生物学研究センター研究員、米国スタンフォード大学医学部睡眠研究センター客員准教授、国立精神・神経医療研究センター睡眠・覚醒障害研究部部長を経て、2018年より現職。日本睡眠学会理事、日本時間生物学会理事など各種学会の理事や評議員のほか、睡眠障害に関する厚生労働省研究班の主任研究員などを務めている。これまでに睡眠薬の臨床試験ガイドライン、同適正使用と休薬ガイドライン、睡眠障害の病態研究などに関する厚生労働省研究班の主任研究者も歴任。『8時間睡眠のウソ。日本人の眠り、8つの新常識』(川端裕人氏と共著、集英社文庫)、『睡眠薬の適正使用・休薬ガイドライン』(編著、じほう)などの著書がある。近著は『朝型勤務がダメな理由』。

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