睡眠研究という仕事柄、夜中に検査や実験をすることが多い。一段落ついて家路につくと深夜になることもしばしばだ。

 私が研修医だった20数年前は、コンビニの数も少なく、夜中に開いているスーパーやファミレスなどごくわずか。小腹がすいてもカップラーメンをすするのが関の山であった。今では夜間営業の店が至る所にある。深夜だろうが、明け方だろうが、食べ物に困ることがない。

 ほかにも、映画館、カラオケ、漫画喫茶、銭湯や美容院などなど業態も実に多種多様。このような便利生活を支えているのが夜勤(交代勤務)の従事者である。今や就労人口の約3割が何らかの交代勤務に就いている。そしてその約3分の2が22時から5時にかかる、いわゆる夜勤に従事している。24時間、365日、いつでも誰かが誰かのために働いている。働く人がいればその子供をみる深夜保育の職員もいる。まさに夜勤の連鎖である。深夜保育士の子供はダレが面倒をみているのだろう……。

(イラスト:三島由美子)
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 講演会などでは24時間社会、夜型社会への警鐘を鳴らすこともあるが、我ながら「建前論だなぁ」と思う。この便利な生活を捨てられるかと問われれば、全く自信が無い。昨晩だって深夜2時過ぎだというのにコンビニに搬入されたばかりのおにぎりとサンドイッチを「夜中にお仕事、お疲れ様でーす」と感謝しつつ購入したばかりだ。

 欲しいときに手に入る便利さを知ってしまった以上、もはや以前のように大部分の人が「昼に働き、夜中は寝る」社会に戻ることはないと思う。だとすれば、労働者の健康にとってできるだけ優しく、持続可能な働き方を模索した方が現実的なのだろう。

 では「どうすれば安全かつ効率的に夜勤を行えるか?」

 この命題については多くの研究が行われてきた。そして得られた結論は「よい方法など無い」。なんとも身も蓋もない話であるが、日勤と遜色なくとはいかないまでも、ある程度リスクを低減することは可能である。もう少し詳しく解説しよう。

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