第30回 夜勤の心得 –時計はそのまま、眠気に対処−

 海外では数週間〜数カ月間続く恒常的な夜勤シフトもあるものの、日本ではかなり珍しい。2交代や3交代など夜勤のパターンによっても異なるが、月に5〜8回(週に1〜2回)程度の夜勤が一般的である。そのような散発的な夜勤に合わせて体内時計を動かそうとしても到底間に合わない。強い光を特定の時間に長時間浴びるなど、もう少し速く時刻を合わせられる特殊な方法を用いても最低数日かかる。

 たとえうまく体内時計を夜勤時刻に合わせられたとしても、夜勤明けが問題である。1週間の大部分は昼に起きて夜に寝ることになるので、かえって不都合が生じる。1晩か2晩しか続かない夜勤のために体内時計を調節するのは合理的ではないのである。

 悩ましいのは中途半端に長い夜勤である。ある自動車メーカーでは1週間の日勤と夜勤を交代で行っていると聞いた。これは珍しいスケジュールである。いろいろな理由があるのだろうが、睡眠医学的にはよろしくない。

 1週間もあれば体内時計がそれなりに夜勤に合わせて動いてしまうが、その効用が十分に得られる前に日勤に戻ってしまうからである。日勤時も夜勤時も中途半端な時差ボケ状態が持続する最悪のコンディションになりかねない。その地域の多くの関連企業が自動車メーカーに合わせて同じシフトを組んでいるとのことで影響は甚大である。

 そこで、最も一般的な週に1〜2回程度の夜勤に従事する際の心得としては、

1)体内時計は日勤に合わせて固定する
2)夜勤時の眠気には仮眠やカフェインで対処する。特に若者には仮眠が効果大
3)夜勤中の仮眠は体内時計の時刻を安定化させる効果もある
4)ただし眠気がとれてもパフォーマンスも向上しているとは限らないことに留意する
5)夜勤明けの運転も要注意

 夜勤中の眠気対策、夜勤明けの不眠対策の詳細については、次回、夜勤が苦手なトリ君を相手に補講を行う予定である。

つづく

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三島和夫

(イラスト:三島由美子)

三島和夫(みしま かずお)

1963年、秋田県生まれ。秋田大学大学院医学系研究科精神科学講座 教授。医学博士。1987年、秋田大学医学部医学科卒業。同大助教授、米国バージニア大学時間生物学研究センター研究員、米国スタンフォード大学医学部睡眠研究センター客員准教授、国立精神・神経医療研究センター睡眠・覚醒障害研究部部長を経て、2018年より現職。日本睡眠学会理事、日本時間生物学会理事など各種学会の理事や評議員のほか、睡眠障害に関する厚生労働省研究班の主任研究員などを務めている。これまでに睡眠薬の臨床試験ガイドライン、同適正使用と休薬ガイドライン、睡眠障害の病態研究などに関する厚生労働省研究班の主任研究者も歴任。『8時間睡眠のウソ。日本人の眠り、8つの新常識』(川端裕人氏と共著、集英社文庫)、『睡眠薬の適正使用・休薬ガイドライン』(編著、じほう)などの著書がある。近著は『朝型勤務がダメな理由』。