(イラスト:三島由美子)
(イラスト:三島由美子)
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 先回は「夜型生活」の問題点について取り上げた。悪しき生活習慣の代名詞のように扱われることの多い夜型生活だが、生活習慣病や心血管系疾患のリスクを高める直接的な原因は夜型生活そのものではなく、夜更かしの割に寝坊ができないことによる睡眠不足にあることを解説した。睡眠不足の人は朝に食欲が無く朝食を摂らない、運動不足、飲酒量が多いなどの生活習慣の問題も抱えやすい。

 とはいえ残念ながら、夜型生活そのものには睡眠不足とは別にもう一つ弱点がある。それは睡眠と体内時計のミスマッチ(内的脱同調)が生じやすい点だ。内的脱同調とは、睡眠や覚醒(行動)が体内時計の最も好ましい時間帯から外れている状態を指し、眠気や不眠、倦怠感、食欲低下、集中力やパフォーマンス(認知機能)の低下などがよく起きるほか、一部の人では抑うつやイライラなどの精神症状が生じる。

 私たちの睡眠・覚醒をはじめ、体温や血圧、ホルモン分泌、代謝、免疫など生体機能のほとんどが体内時計の支配を受けている。催眠性ホルモンであるメラトニンは夜間に分泌が増加し、逆に強い覚醒作用のある副腎皮質ホルモンは夜間に底を打った後、起床直前から急速に増加して午前中にピークを迎える。そのほかにも体温や血圧、脈拍など多くの生体機能が「夜に質の高い睡眠が得られ、日中にしっかりと覚醒して行動できる」ようにお互い異なるタイミングで絶妙な生体リズムのハーモニーを形成している。

 先にも書いたように、内的脱同調とはこれら最適化された生体機能リズムのハーモニーから外れた時間帯で眠る(覚醒して活動する)現象を指す。

 例えば内的脱同調の最たるものは、普段寝ている時間帯に活動しなくてはならない交代勤務や時差飛行時に生じる。睡眠時間帯は普段より急激かつ大幅にズレる一方、その他の多くの生体機能のリズムは簡単には動かない特徴がある。体内時計は昼夜の環境光で主に調整されているため、睡眠時間帯のように恣意的に大きく動かすことはできないからだ。

 普段の生活では私たちの睡眠・覚醒は基本的に体内時計の指令に従っているが、必要に応じて体内時計に逆らって目覚めることができる。これがその他の生体機能との大きな違いである。この活動時間帯の柔軟性があるゆえに人類は多様で複雑な24時間社会システムを構築できたのだが、必然的に内的脱同調を抱えることになった。

 特殊な実験室を使って内的脱同調を人工的に作り出すこともできる。私が国立精神・神経医療研究センターに勤務していたときに行った実験では、たとえ健康な人でも内的脱同調が強くなればなるほど(すなわち睡眠時間帯と生体機能リズムの位相のズレ幅が大きくなるにしたがって)抑うつ気分やイライラが強まることが確認された。それに類した研究報告は多数ある。

次ページ:数時間程度の小さなズレでも影響が

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