第28回 認知症と睡眠の切っても切れない関係

 見方を変えて、一部の高齢者に見られる睡眠問題が、実は認知症を発症するかなり以前から出現する“予兆(前駆症状)”ではないかという仮説もある。日中の活発さが失われ睡眠の質が低下することが認知症の前駆症状であるのか、発症を促進するリスク(原因)であるのか現時点では結論は出ていないが、いずれにしろ高齢者の見守りや生活指導のヒントになりそうである。

 そのような高齢者を見かけたら、昼は室外へ出て日光浴をしてもらう、それが無理でも室内を明るくし日差しの入る窓際で過ごす時間を作り、夜はしっかり暗くして眠ってもらうことが基本である。コミュニティー活動など社会参加ができればモアベター(古!)である。認知症のある高齢者にはデイケアへ参加してもらうなど日中の覚醒度が上がるように心がける。このようなメリハリのある生活リズムを維持する試みは米国アルツハイマー協会の家族向け指導などでも取り入れられている。地味だが根気強く続けることがポイントである。

 従来は、認知症のリスクを高める生活習慣として栄養の偏り、喫煙、運動不足、社会活動の低下などが注目されてきた。これらに加えて、睡眠リズムの乱れや不眠、睡眠不足などの睡眠障害も見逃せない問題として浮上してきた。考えてみれば至極当然である。定期的な食事や運動は質の良い睡眠をもたらす、ニコチン(喫煙)が睡眠の質を下げるなど、従来の生活習慣指導と睡眠は切っても切れない深い関係があるのだから。

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三島和夫

(イラスト:三島由美子)

三島和夫(みしま かずお)

1963年、秋田県生まれ。秋田大学大学院医学系研究科精神科学講座 教授。医学博士。1987年、秋田大学医学部医学科卒業。同大助教授、米国バージニア大学時間生物学研究センター研究員、米国スタンフォード大学医学部睡眠研究センター客員准教授、国立精神・神経医療研究センター睡眠・覚醒障害研究部部長を経て、2018年より現職。日本睡眠学会理事、日本時間生物学会理事など各種学会の理事や評議員のほか、睡眠障害に関する厚生労働省研究班の主任研究員などを務めている。これまでに睡眠薬の臨床試験ガイドライン、同適正使用と休薬ガイドライン、睡眠障害の病態研究などに関する厚生労働省研究班の主任研究者も歴任。『8時間睡眠のウソ。日本人の眠り、8つの新常識』(川端裕人氏と共著、集英社文庫)、『睡眠薬の適正使用・休薬ガイドライン』(編著、じほう)などの著書がある。近著は『朝型勤務がダメな理由』。