第75回 朝ごはんで体内時計をリセットのウソ

 同調因子に共通した特徴は、睡眠リズムだけではなく、自律神経やホルモン分泌リズムなど質の良い睡眠を保つために必要なさまざまな生体リズムの時刻を全部まとめて動かすことができる点にある。

 その意味で、睡眠だけを誘発する睡眠薬やお酒とは根本的に作用が異なる。睡眠薬やお酒の作用はその晩限りで、翌朝には消えてしまう。体内時計の時刻は遅れたままなので睡眠薬やお酒をやめれば再び寝起きは悪くなる。真の意味で「早寝・早起き」が楽になるわけではない。

 本当に朝ごはんも同調因子として働くのであれば、毎日朝ごはんを食べることで夜中に普段よりも早い時間帯から脳の温度(深部体温)が低下したり、催眠作用を持つメラトニンの分泌が始まるなどして、結果的に早寝早起きが楽になるはずである。

 ところが残念ながら、先にも紹介したように、ごく最近になり欧州の研究グループがこの課題に取り組んだ結果、食事時刻を変えても体内時計の時刻を全く動かすことができなかった。つまり、早寝早起きをすれば朝ごはんを食べられるが、朝ごはんを食べたからといって体内時計が朝型になって早寝早起きが楽になるわけではないということである。

 え? でも実際に朝ごはんを食べるようになってから子どもが早寝早起きできるようになったって。

 それは朝ごはんが体内時計に働きかけたのではなく、早寝早起きによって光の浴び方が変わったためだと思われる。毎日朝食を摂るように心がければそれまでよりも早起きをしなくてはならず、体内時計を朝型にする朝日をより多く浴びるようになる。

 また早起きした分だけ早寝をするようになり体内時計を夜型にする夜間照明を浴びる時間も短くなる。結果的に、生体リズムの時刻が全体的に早まった結果、以前よりも早寝早起きが楽になったのだろう。

 ちなみに、第24回「朝型勤務がダメな理由」第25回「朝型勤務補講:朝型夜型って何?」でも解説したように、すべての人がこのように事がうまく進むわけではない。体質的に夜型傾向が強い人は頑張って早寝早起きをしてもなかなか体内時計の時刻が早まらず、寝起きが楽にならないばかりか早起きした分だけ睡眠不足になることすらあることは再度強調しておきたい。

 さて、これまでご紹介したように、朝ごはんには生体リズム全体の時刻調節をするパワーはないのだが、「体の末梢時計」の時刻調節ができることが知られている。末梢時計とは何だろうか?

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