第75回 朝ごはんで体内時計をリセットのウソ

「朝ごはん」「体内時計」「リセット」をキーワードにしてインターネットで検索しても、数多くのサイトがヒットし、タイトルだけ読み流すと夜型体質の人でも「朝ごはん」さえ食べれば体内時計が朝型に切り替わり、早寝早起きが楽になるかのように書かれている。

 本当に「朝ごはん」にそのようなパワーがあるのだろうか? この問いに対する回答は易しくない。食事は体内時計(生体リズム、概日リズム)に影響するのか、影響するとすれば体内時計のどのような機能を調節するのかという問いは学術的には奥深く難しいテーマで、現在でも侃々諤々のホットトピックなのである。結論から言えば、手間のかかる実験を行った結果、ヒトでは「朝ごはん」には明確な早寝早起き効果は認められないことが明らかになった。つい最近のことである。

 子ども向けに「朝ごはん」の効果を分かりやすく伝えたい気持ちは分かるが、科学的に証明されていないことを活字にして明記するのは如何なものか。いささか大人気ないとは思いつつ、今回取り上げた次第である。

「難しい話はともかく、朝ごはんをしっかり食べれば、日中元気に過ごせて、夜もグッスリ眠れるのは当たり前なのでは?」 そう感じる方も少なくないと思う。

 気持ちは分かるが、「朝ごはんに睡眠リズムの調節効果がある」という場合には、朝ごはんを食べることによって元気になり巡り巡って睡眠リズムが変わるのではなく、あくまで睡眠リズムを決めている体内時計に直接働きかけて、楽に早寝早起きができるようになるということを意味している。

 第67回「睡眠研究のための“異時間空間”「隔離実験室」」でも触れたが、1日当たり10分程度ずれていく体内時計を日々24時間リズムに合わせる(同調させる)のすら結構大変で、そのために絶対的パワーを発揮しているのは「光」である。体内時計時刻の調節作用を持つものは同調因子と呼ばれ、光以外では運動やある種のホルモンも時刻調節作用を持つとされるがその作用は光に比べて弱い。

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