逆に言えば、普段休日に寝だめをしている人でも、平日の出勤や登校時に朝日を浴びることで体内時計の時刻を徐々に朝型に進めているのである。となれば、週の後半になるに従って起床が楽になってくる、はずなのだがなかなかそうならない。というのも、早起きする分だけ早寝にならないため、睡眠不足が溜まるからである(睡眠負債)。なぜ体内時計が朝型になっても早寝ができないのか? それは長時間労働で帰宅が遅いなどのやむを得ない事情で「早寝ができない」というよりも、深夜にスマホなどをして「早寝をしない」のが最大の原因。夜型の人はこの傾向が特に強い。ここら辺は第72回「睡眠時間は固定費です 人は何時間眠ればいいのか」で解説した。

 まとめると、「ブルーマンデー」で悩んでいる夜型の人は、週末の寝だめで体内時計が大きく遅れることで週明け月曜日の朝の寝起きが非常に悪くなる。加えて平日の早起きの割に早寝はしないので睡眠負債を溜め込んでしまい、それが翌週の寝だめにつながる悪循環に陥っているのである。今回は詳しい説明は割愛するが、このような平日と休日の睡眠時間の大きな変動は睡眠と種々の生体リズムとの間の相互位相関係の崩れ(内的脱同調と呼ばれる現象)を引き起こす。

 実は、今回紹介した夜型の「ブルーマンデー」の睡眠パターンは、10数年ほど前から時間生物学や睡眠医学で注目されるようになった社会的ジェットラグ(社会的時差ぼけ)と呼ばれるものとほぼ同じである。社会的ジェットラグに特有な内的脱同調と睡眠負債が持続すると、パフォーマンスの大きな低下やうつ状態、血糖コントロールや脂質代謝の異常などさまざまな不調を引き起こすことが知られるようになった。社会的ジェットラグについては第55回「妊活するなら脱「週末の夜更かしと朝寝坊」」でも簡単に触れている。

 今回紹介した内的脱同調や睡眠負債は、夜型ブルーマンデーのパフォーマンスの低下や抑うつの原因になっているのだが、もう少し詳しい説明は対策法と合わせて次回ご説明することにしたい。

つづく

三島和夫

(イラスト:三島由美子)

三島和夫(みしま かずお)

1963年、秋田県生まれ。秋田大学大学院医学系研究科精神科学講座 教授。医学博士。1987年、秋田大学医学部医学科卒業。同大助教授、米国バージニア大学時間生物学研究センター研究員、米国スタンフォード大学医学部睡眠研究センター客員准教授、国立精神・神経医療研究センター睡眠・覚醒障害研究部部長を経て、2018年より現職。日本睡眠学会理事、日本時間生物学会理事など各種学会の理事や評議員のほか、睡眠障害に関する厚生労働省研究班の主任研究員などを務めている。これまでに睡眠薬の臨床試験ガイドライン、同適正使用と休薬ガイドライン、睡眠障害の病態研究などに関する厚生労働省研究班の主任研究者も歴任。『8時間睡眠のウソ。日本人の眠り、8つの新常識』(川端裕人氏と共著、集英社文庫)、『睡眠薬の適正使用・休薬ガイドライン』(編著、じほう)などの著書がある。近著は『朝型勤務がダメな理由』。

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