第74回 その寝ぼけ行動、認知症の始まりかも……
今年4月に、故ジョン・レノンの妻オノ・ヨーコさんがレビー小体型認知症に罹患しているようだという記事が週刊誌に載った。御年84歳とのことなので認知症に罹患しても不思議でない年齢ではあるが、珍しい病名に目を奪われた読者も多かったと思う。
認知症とは、物忘れがひどくなる「記憶障害」、時刻や自分のいる場所が分からなくなる「見当識障害」、物や言葉などが分からなくなる「失認」、着衣などができなくなる「失行」など、さまざまな認知機能の障害が生じる疾患の総称である。これらの症状は認知症の中核症状と呼ばれている。
認知症はその原因別に幾つかに分けられる。最も多いのはアルツハイマー型で患者の約半数を占める。次いで多いのがレビー小体型と脳血管性で、この3つで認知症の約8割を占める。つまり、レビー小体型認知症は決して稀な疾患ではないのだが知名度は高いと言えない。
それには理由があって、レビー小体型は比較的最近発見された認知症だからである。最近と言っても日本人研究者がその存在を最初に提唱してからかれこれ40年にもなる。ところが長らく欧米で認められず、1990年代に入ってようやく国際会議で診断基準が定められたという経緯がある。私の学生時代(1980年代)の教科書にも載っていなかった。
そのレビー小体型認知症を本コラムで取り上げるのは、「レム睡眠行動障害」という特殊な睡眠障害が60%もの患者さんで認められるからである。一般的には中高年の0.5〜1%でみられる程度なので、いかにレビー小体型認知症では高率に合併するかお分かりだろう。

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