第74回 その寝ぼけ行動、認知症の始まりかも……

 レビー小体型認知症では、脳内の神経細胞内にあるα-シヌクレインというタンパク質の固まりが異常に蓄積して神経変性(細胞死)をもたらす。このα-シヌクレインは脳内のさまざまな部位に蓄積するのだが、脳の「下から上に向かって」蓄積することが症状の出現順序に関連しているのではないかという仮説が提唱されている。

 その仮説によれば、まず脳の下部にある嗅球と脳幹部にα-シヌクレインが蓄積して細胞を障害する。嗅球が障害されると嗅覚異常が生じ、「オフスイッチ」がある脳幹部が障害されるとレム睡眠行動障害が出現する。実際、認知症を発症していないレム睡眠行動障害の患者さんの脳を死後に調べると脳幹部にα-シヌクレインが蓄積していることが確認されている。

 次いで、蓄積が脳の真ん中辺りにある中脳に拡がり、体の動きをコントロールする神経伝達物質ドーパミンを産生する部位が障害されるとパーキンソン症状が出現する。最終段階で大脳皮質など脳の「最上部」に幅広く蓄積すると中核症状が明らかになるというわけである。今では、α-シヌクレインの蓄積によって神経が変性死するレビー小体型認知症やパーキンソン病、そのほかいくつかの神経疾患は、共通した病因を持つ疾患としてα-シヌクレイノパチーと総称されている。

 α-シヌクレインが脳の「下から上に向かって」蓄積するという仮説の真偽は検討されている最中だが、臨床特徴ともよく合致するため幅広く受け入れられている。

 この仮説が正しいとすれば、パーキンソン病と同様に、レム睡眠行動障害もまたレビー小体型認知症と親戚のような関係にあるとも言える。ただ、レム睡眠行動障害の患者さん全員がα-シヌクレイノパチーを発症するわけではないので、レム睡眠行動障害にもα-シヌクレインの蓄積が原因のものとそれ以外のものがあるようだ。ただし残念ながら、現在の脳画像や血液検査などの診断技術では両者の区別は難しい。

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