第136回 目覚めに混乱や絶叫など、大人でも意外と多い「覚醒障害」

(イラスト:三島由美子)
(イラスト:三島由美子)
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 手にスプーンを握りしめた赤ちゃんが、カレーライスを頬張りながら、目はうつろで前後に大きくゆーらゆーら。「あ、危ない」と思った直後に食器に顔を突っ伏し、カレーまみれの顔で大泣き。

 子どもが眠気と闘っている、そんな様子を映した動画をよく見かける。実際、子どもは大人に比べて眠気に抵抗する力が弱く、いったん眠くなると、美味しいものを食べていようが、好きなおもちゃで遊んでいる最中だろうが、あっという間に寝落ちをしてしまう。大人の場合には、よほどの睡眠不足でもなければ、大事なこと、関心のある事をしている最中に不可抗力的に短時間で寝落ちしてしまうことはない。

 眠気に抗しがたいのは目覚めるときも同様で、大人の場合、目覚ましが鳴れば眠気に抗して目覚めることができるが、子どもはそうはいかない。例えば、普段よりも早い時間に起きなくてはならない時、親が声をかけてもなかなか目覚めず、ボンヤリ状態のまま親が着替えを手伝って、それでもしっかりと目覚めないこともある。

 このように、子どもは睡眠と覚醒の切り替えに時間がかかり、スイッチを入れるようにパチッと目覚めるのが苦手であることが知られている。時にはこの切り替えがうまくいかず、睡眠と覚醒の狭間(はざま)で異常な行動をしてしまうことがあり、睡眠障害の診断が付くことがある。

 そのような疾患の代表が、一般にもよく知られている「夢遊病」で、現在の診断基準では「睡眠時遊行症(すいみんじゆうこうしょう)」と命名されている。睡眠時遊行症の子どもは、見た目は眠りから覚めているように見えるのだが、目的も無くウロウロと動き回ったり、声かけにも反応せずボンヤリしたまま壁を見つめ続けるなど不可解な行動をする。

 病気のメカニズムはまだ十分には解明されていないが、深いノンレム睡眠から異常行動が生じることが多い。認知機能に関わる脳部位(前頭葉)や記憶を司る海馬などは睡眠状態だが、運動を司る脳部位(運動野)などは覚醒に近い状態であるなど、まだら状に覚醒している(眠っている)という研究報告もある。おそらく睡眠時遊行症では睡眠(特に深い睡眠)から覚醒に移行する機能が弱く、何らかの理由で睡眠が中断した際にしっかりと覚醒に移行できず、半覚醒のまま行動してしまうと考えられている。

次ページ:大人の覚醒障害の興味深い調査結果

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