ゴメンゴメン(笑) つまり、「仮の夜型」ということ。「なんちゃって夜型」「真の夜型」というのは正式な学術用語じゃなく、僕たちが研究の結果をもとに面白半分で付けた名前なんだ。このようなへんてこなネーミングは個人的にはあまり好きじゃないのだけれど、夜型の誤解を解くためによいかと思って。

 夜型の調査研究の結果、何かの理由で宵っ張り型の生活をたまたま続けているうちに夜型生活が固定してしまった、でも必要があれば朝型生活に戻れる人が混じっていることが分かってきたんだ。そのような朝型生活にすぐ戻れる夜型を「なんちゃって夜型」、朝型生活への適応が体質的に難しい夜型を「真の夜型」と呼んでいるんだよ。

「なんちゃって」と「真の」夜型を質問紙などで簡単に見分けることはできないんですか? 前回、質問紙を紹介されてましたが。

残念ながら現時点では難しくて、手間のかかる検査を行うか、生活史を細かく聴き取って判断するしかないね。どのような検査を行うかはいずれ紹介したいと思います。いずれにせよ、結婚などを契機にスムーズに朝型生活に移行できる人は「なんちゃって」だった可能性が高い。また、子供の弁当を作る年代になると加齢の影響もあるだろうね。10年単位で見れば年齢とともに徐々に朝型に向かうから。それでも先に「数%」と書いたように加齢変化の影響は微々たるモノなんだ。

 もう1つ、夜型の人でも年齢と共に必要睡眠時間が短くなるため若いときより早起きが楽になる。でもこれは厳密な意味で朝型体質になったとは言わないけどね。いずれにせよ加齢変化は時間のかかる話で、「この夏から朝型勤務」なんて業務命令には対応しようがないね。

(もじもじ)実は、付き合っている女性がいるんですが、私と同じ夜型で……。結婚したら朝型に変わってくれるかもと期待していたんですが……。サラリーマン川柳にあった「まだ寝てる、帰ってみればもう寝てる」ような奥さんになっちゃうのかなぁ……。

いや、ちょっと、結論を急がないでね……。「なんちゃって夜型」かもしれないし……(やべー)

「一番先に起きるのはお母さん」という固定観念に責められて苦労している女性が多いのは間違いないよ。主婦業は究極の朝型勤務かつ長時間労働だからね。彼女のことも理解してあげて。早起きの辛さはキミが一番分かっているでしょ。実際、先の225組の夫婦研究でも、妻の方が夫よりも早起きして、睡眠時間が短く、睡眠障害の度合いも強かったんだ。日本人は国際的に見てもトップクラスの短時間睡眠だというけれど、実は男性はさほどでもないんだ。突出して睡眠時間が短いのは有職女性なんだよね。おっと、これ以上書くとブーメランになって戻ってくるから話題を変えよう。

話題を変えるなら、こんどは対策をどうしたらいいか教えてください。火星に移住するまでの間、朝型勤務に耐えなくちゃならないかもしれないし。頑張って続けますから、朝型生活に近づくためのできるだけ効果的な方法を教えてください。

それじゃ、夜型生活からの脱出方法について考えてみようか。重力圏から抜けるのは大変だけど、一旦離脱してしまえば慣性航行に移れることもあるんだよ。紙数が尽きたので、対策編は次回だね。

つづく

三島和夫

(イラスト:三島由美子)

三島和夫(みしま かずお)

1963年、秋田県生まれ。秋田大学大学院医学系研究科精神科学講座 教授。医学博士。1987年、秋田大学医学部医学科卒業。同大助教授、米国バージニア大学時間生物学研究センター研究員、米国スタンフォード大学医学部睡眠研究センター客員准教授、国立精神・神経医療研究センター睡眠・覚醒障害研究部部長を経て、2018年より現職。日本睡眠学会理事、日本時間生物学会理事など各種学会の理事や評議員のほか、睡眠障害に関する厚生労働省研究班の主任研究員などを務めている。これまでに睡眠薬の臨床試験ガイドライン、同適正使用と休薬ガイドライン、睡眠障害の病態研究などに関する厚生労働省研究班の主任研究者も歴任。『8時間睡眠のウソ。日本人の眠り、8つの新常識』(川端裕人氏と共著、集英社文庫)、『睡眠薬の適正使用・休薬ガイドライン』(編著、じほう)などの著書がある。近著は『朝型勤務がダメな理由』。

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