第103回 長く眠る人の死亡リスクが高いという謎

 気になる睡眠時間と死亡率との関連だが、これも米国で1982年から1988年にかけて110万人以上を対象にして行われたコホート調査で「U字型」の関係が確認されている。それによれば、睡眠時間が7時間台の男性/女性に対して3時間台の死亡リスクは1.19/1.33倍、4時間台は1.17/1.11倍。そして、9時間台では1.17/1.23倍、10時間を超えると1.34/1.41倍になり、短時間睡眠とほぼ同等かそれ以上に長時間睡眠での死亡リスクが高かった。

 長時間睡眠と死亡リスクの関係については、日本人でも確認されている。40歳〜79歳の10万人の男女を約10年間追跡したJACC study(Japan Collaborative Cohort Study)によれば、睡眠時間が7時間台の男性/女性に対して9時間台(死亡リスク1.27/1.54倍)、10時間超(同1.67/2.03倍)の長時間睡眠では米国人以上に死亡リスクの高さと強く関連していた。一方で、米国と同様に7時間台の人に対して5時間未満の女性は死亡リスクが2.00倍と高かったのに対して、男性では有意な差は認められなかった。おそらくこれは、睡眠時間が4時間未満の男性が224人と少なく統計的検出力が不足していたためと思われる。

 それにしても、長時間睡眠者で健康リスクが高いのはナゼなのだろうか? 実はそのメカニズムはよく分かっていない。

 短時間睡眠についてなら、研究する方法はある。ごくごく少数いる生まれながらのショートスリーパーを除けば、短時間睡眠者の多くは自分で睡眠時間を削っているいわゆる睡眠不足であるため、実験的に睡眠を剥奪することでシミュレーション研究が可能である。

 本コラムでも何度か取り上げたように、短時間睡眠が血圧や代謝に悪影響を及ぼすメカニズムとして、摂食ホルモンの変動による食行動の変化、自律神経や内分泌、免疫系などさまざまな身体機能の変化、うつ状態や身体運動量の低下など数多くのパスウェイが知られており、これらが同時並行的に生じる。

 一方で、長時間睡眠者はその実態すらよく分かっていない。大規模なコホート調査では参加者一人一人の細かい生活状況までは把握できないことが多いためである。この種の調査の参加者は40代以降の中高年が多数を占める。参加者の中には、病院を受診するほどではない程度の身体的な衰えや、軽いうつ状態などの精神的な不活発さ、経済的な事情によるごろ寝や運動不足など、「長時間睡眠」をもたらす要因とその悪影響を抱えている人も一定数いるだろう。

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