第24回 朝型勤務がダメな理由
朝型勤務と似た制度としてサマータイムがある。ご存じの読者も多いと思うが、サマータイムでは3月の第2日曜に時計を1時間進め(夏時間)、11月の第1日曜に標準時刻に戻す。今回公務員を対象に行う朝型勤務は期間は2カ月と短いが、変動幅は1時間以上と欧米のサマータイムよりも大きい。実はこれ、事故や体調不良を引き起こす最悪パターンである。
というのも、米国、フランス、ドイツ、カナダなどサマータイムをすでに導入している欧米各国の研究者の調査によれば、時刻の切り替え時期(特に夏時間への移行時期)に死亡事故や心筋梗塞など心身の不調が顕著に増加することが明らかになっているからである。勤務時間をコロコロ入れ替えるのが一番よくない。しかも、1時間の変更でも人々の安全や健康に多大な影響があるのに2時間も前倒ししたら……。公務員の方は要注意である。
ではサマータイムのメリットの方はどうであったか。残念ながら、期待された省エネ効果はさほどでもないことも明らかになってしまった。先の調査に関わったフランスの議員団はこれらの結果を受けて、このような人為的で不自然な制度は止めるべきであると勧告している。すなわち国際的には時代遅れの制度なのである。
日本でも福田内閣時代にサマータイムの導入が検討されたが、先のような反論が数多く出され結局見送られた。あの時の論議は忘れられたのであろうか? 「朝型勤務」などと名称を変えてもこれは改悪版サマータイムであり、科学的な視点から見ればその導入には理がない。
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