陸上のベン・ジョンソン、野球のアレックス・ロドリゲス、自転車ロードレースのランス・アームストロング、テニスのマリア・シャラポワと聞けば、ピーンとくる方もおられるだろう。そう、ドーピング問題が持ち上がったトップアスリートの面々である。己の身体能力の極限を競うスポーツ界にあってドーピングは最大の禁じ手である。シャラポワは疑惑を否定しているらしいが、大きく自身のブランドイメージを損ねてしまったことは間違いない。

 ドーピングの定義はなかなか難しいのだが、一般的にはスポーツ選手が身体能力を強化するために、薬物や何らかの装置などを使用して競技成績の向上を狙う手法のことをさす。筋力アップ効果のあるステロイドなどがその代表格だ。2008年の北京オリンピックで登場し世界記録を量産した競泳水着レーザー・レーサーなどは物理的ドーピングにあたるのか大きな論議を巻き起こした。ごく最近では、日本自転車競技連盟のスポンサー企業が提供した公式サプリ(梅肉エキス)の中にステロイドの一種が含まれており、企業側が平身低頭するという話もあった。

(イラスト:三島由美子)
(イラスト:三島由美子)
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 スポーツ界でドーピングが禁じられているのは一言で表せば「フェアじゃない」からだ。そりゃそうである。薬物や補助装置を許したのでは、いずれは薬漬けサイボーグ同士の闘いになるだろう。

 ドーピング問題はコンマ1秒を競い合うトップアスリートの世界だけの話と思われるかもしれない。だが、いずれ我々のような一般人の間でも大きな話題として持ち上がりそうな気配がある。

 さすがに、オリンピック選手のように速く走りたい、より高く飛びたいという人は少ないだろうが、もっと頭が良くなりたいかと問われれば大概の人はイエスと答えるだろう。たとえそれが「フェアじゃない」方法だと分かっていても。まさに今後我々にも降りかかってくるのは知的能力を向上させるドーピング問題なのである。

 現在、脳科学者の間でその是非が論議されている知的能力のドーピングとは、最近流行の「大人のドリル」のような物理的方法ではなく、いわゆる「認知機能強化剤」、別名「スマートドラッグ」である。大人のドリルは面倒でも、一粒の錠剤で記憶力が強化され、集中力が高まり、仕事のパフォーマンスが向上する可能性があると言われればどうでしょう? 誘惑に勝てますか?

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