第22回 寝てはいけない時間に眠る人々、その傾向と対策

 ではどうするか。近道は週末の寝坊を止めることである。平日に早起きをして通勤や通学時に朝日を浴びていると徐々に体内時計=「睡眠禁止ゾーン」が早まり寝つきが良くなるのだが、週末に寝坊をすると一気に逆戻りしてしまう。少なくとも3週間は寝坊をせずに過ごせば体内時計は平日の起床時刻に合わせて安定化してくる。そして寝つける時刻も標準的な時間帯に近づいてくる。週末の寝だめをしないと当初は寝不足感が強いが、それは昼寝で補うようにしてほしい。休日もいったん目を覚まして起床からの6時間(体内時計を朝方にシフトする時間帯)は自然光を積極的に浴びる。そして必要ならばその後に20〜30分程度の短い昼寝をするのがベストなやり方である。

 最後に、同じ夜型でも少し変わったケースを紹介しよう。子供の夜型である。注意欠陥多動性障害ADHDの子供さんの中には就床抵抗が強い(寝床に入るのを嫌がる)タイプがいる。従来は睡眠障害で一括りにされていたが、夜型が原因の一つであることが分かってきた。同じADHD児でも寝つきのよい児童に比べて寝つきの悪い児童では体内時計の時刻が遅れていたのだ。結果的に、母親は「睡眠禁止ゾーン」で必死に寝かしつけようとし、子供は必死に抵抗するというバトルを繰り返していた。寝つきの悪い子供の母親に限って早寝をさせることに躍起になってしまうことがある。夜の親子げんかは子供の興奮を高めるばかりだし、睡眠薬も無効である。このようなケースでは光やメラトニンを使って体内時計を調整してやる方が効果的なのだが、残念なことに親も医療者も睡眠リズムの問題として認識していないことが多い。

 ほかにも、やたらと早寝を強いられて夜間徘徊が悪化している認知症の高齢者や、不眠や眠気に悩む早出・遅出・深夜勤務者など、「睡眠禁止ゾーン」と生活スケジュールのミスマッチのために眠りに苦労している人々は少なくない。私たちは個人の「睡眠禁止ゾーン」を簡単に調べる方法の開発に取り組んでいるが、その成果は別の機会にご紹介したい。

つづく

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三島和夫著

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三島和夫

(イラスト:三島由美子)

三島和夫(みしま かずお)

1963年、秋田県生まれ。秋田大学大学院医学系研究科精神科学講座 教授。医学博士。1987年、秋田大学医学部医学科卒業。同大助教授、米国バージニア大学時間生物学研究センター研究員、米国スタンフォード大学医学部睡眠研究センター客員准教授、国立精神・神経医療研究センター睡眠・覚醒障害研究部部長を経て、2018年より現職。日本睡眠学会理事、日本時間生物学会理事など各種学会の理事や評議員のほか、睡眠障害に関する厚生労働省研究班の主任研究員などを務めている。これまでに睡眠薬の臨床試験ガイドライン、同適正使用と休薬ガイドライン、睡眠障害の病態研究などに関する厚生労働省研究班の主任研究者も歴任。『8時間睡眠のウソ。日本人の眠り、8つの新常識』(川端裕人氏と共著、集英社文庫)、『睡眠薬の適正使用・休薬ガイドライン』(編著、じほう)などの著書がある。近著は『朝型勤務がダメな理由』。