第124回 「日本人の5人に1人が不眠症」のウソ・ホント

「赤いチョウ」の割合はどこを捕るかで大きく変わる。(イラスト:三島由美子)
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「日本人の10人に1人が不眠で悩む」
「日本人の5人に1人が不眠症」
「成人の約30%に不眠が認められる」

 病気に関する記事では、どれほど多くの人がその病気で悩んでいるか発症頻度を取り上げて解説していることが多い。例えば、不眠症についてネットで少し調べただけでも冒頭のようにさまざまな数字がヒットするのだが、記事によって数値が大きく異なる。不眠症に限らず、他の多くの病気についても同じような食い違いを見かけることがあり、疑問を持たれた方もおられるだろう。

 ある病気の発症頻度を示すのに「有病率」が使われる。有病率とは、ある一時点において、その病気を有している人の割合である。有病率は国の健康施策や、将来必要とされる病床数や医療サービスを地方自治体が整備する計画(医療計画と呼ばれる)に必要不可欠な情報であるため、がんや生活習慣病などのメジャーな疾患については、厚生労働省などが国の事業として大規模調査を行い罹患実態に関する正確なデータを集めている。

 一方、それ以外の大多数の疾患の有病率については個別の研究者などが行う中小規模の調査が多く、病気の定義やデータの収集方法によって結果にばらつきが生じることがある。先の不眠症の有病率データはその一例だが、このような食い違いが生じる理由について解説しよう。

 しっかりとした有病率を算出するには、幾つかのポイントがある。特に、「データの代表性」と「診断精度」が大事なのだが、いずれのハードルも高い。

 まず、「データの代表性」とは、その有病率データが日本全体における平均的な罹患状況を正しく反映していることを意味している。「平均」と書いたのは、調査した地域や対象者の年齢構成などによって調査結果は影響を受けるからである。

次ページ:相反する「データの代表性」と「診断精度」

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