睡眠関連食行動障害の原因は十分に解明されていないが、比較的深い睡眠から食行動が始まり、しっかりとした覚醒に至らないままに食事を続けてしまう一種の覚醒障害(目覚めの神経システムがうまく働かない)であることが分かっている。そのため、驚いた家族が声をかけてもなかなか目を覚まさないことが多い。エピソード記憶(起こったイベントの記憶)や判断力を司る前頭葉は睡眠状態のまま、運動(側頭葉)や視覚(後頭葉)を司る他の脳領域は覚醒状態に近いなど、脳がまだら上に覚醒(睡眠)しているのだと主張する研究者もいる。

「深い睡眠中に異常行動が出現して起床後に全く憶えていない」と聞くと、夢中遊行(夢遊病)を思い出す読者もおられるだろう。夢中遊行(むちゅうゆうこう)については第45回「睡眠中に手をガブリ、そのワケは?」で取り上げた。確かに、睡眠関連食行動障害と夢中遊行には共通点が多いが、睡眠関連食行動障害では異常行動が食行動に集中している点がユニークである。

 なぜ睡眠中に食行動という限定された行動が出現してしまうのか、そのメカニズムは不明である。先にも書いたように摂食障害やダイエット中の人でしばしば見られることから、食に関する認知の歪みや潜在的な食欲の高まりがトリガーとなって場合もあるようだ。

 懸念されるのは、この睡眠障害は長丁場の闘いになることが臨床研究で明らかになっている点である。夜間の食行動が10年以上も続いているケースも報告されている。「原因不明の」肥満に悩み続け、さまざまな医療機関で診察を受けたが原因が分からず、長期間を経てようやく睡眠関連食行動障害の診断を受けた人もいる。

 残念ながら治療法は手探りで進めているのが実情である。抗うつ薬や睡眠薬、ある種の抗てんかん薬、心理療法などによって症状が軽減することがある。お酒やカフェインも控えた方がよい。何もしなければ症状は遷延することが多いので、ご心配であれば睡眠医療の専門施設に相談に行くことをお薦めしたい。

 Youtubeに米国VOAが睡眠関連食行動障害の番組を公開している。中年女性の夜間の食行動の映像記録とともに、詳しい症状や治療経過がレポートされている。ご興味のある方はどうぞ。

次ページ:【動画を見る】本当に眠りながら食べまくる中年女性たち

この連載の前回の
記事を見る

この連載の次の
記事を見る