第112回 年を取っても睡眠の深さは同じ、意外と遅い「睡眠の老化」

(イラスト:三島由美子)
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 できることなら誰しも老いは避けたい。老いを少しでも先送りしたい。そのような願望に駆られる人々に「アンチエイジング(抗加齢)」を謳う化粧品やサプリが大人気で、その市場規模は年々急成長しているそうだ。

 一般的に「加齢」は避けがたい不可逆的な生理現象だが、そのスピードには大きな個人差がある。例えば、5年ほど前(2015年)の研究になるが、米国デューク大学の研究によれば38歳の男女1037人を対象に、内臓や代謝、免疫機能、テロメア(染色体末端にあり、加齢とともに短くなる)などのさまざまな生体指標をもとに、「生物学的年齢 biological aging」を調べたところ、28歳から61歳まで30歳以上の開きがあったという。生後38年間で実年齢に近いほど大きな個人差が生じるとは驚きである。

 実際、中年を過ぎての同級会で久しぶりに顔を合わせると、お互いに「老けたなー」「髪の毛薄くなったな」「腹出たな」などと軽口をたたき合うが、見た目年齢も、体力や身体能力の低下も、持病の多さもまちまちで、しかも年々開きが大きくなることは多くの諸氏が感じているのではないだろうか。

 他の身体機能と同様に、当然ながら睡眠にも特有の加齢変化が生じる。睡眠医学の教科書には一般的に以下のような睡眠パラメータの変化が挙げられている。

・高齢者では朝型が強まり、寝つく時刻も覚醒時刻も早まる
・睡眠時間が短くなる
・深いノンレム睡眠が減少し、浅いノンレム睡眠が主体となる
・中途覚醒が増加する

 実際これらの睡眠の変化は、高齢者でしばしば見られる「早寝早起き」「ちょっとした物音で目覚めやすい」「夜中に何度もトイレに行かなくてはならない」などの特徴とよく合致している。

 ところが、昨年新たに報告された研究によると、睡眠の加齢変化は従来考えられていたよりも軽微であることが明らかになった。この研究では、過去に世界中で行われた169件の質の高い臨床研究で報告された健康な成人(18歳〜79歳)、計5273人分の睡眠データをメタ解析して、さまざまな睡眠パラメータに表れる加齢変化を分析した。

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