第20回 え? 花粉症で眠りの三重苦!?

 第1の苦難は、鼻づまり(鼻閉)によって眠りの質が悪くなってしまうことだ。鼻閉はとりわけ夜間に悪化する。鼻から息が吸い込みにくいため喉の奥(咽頭)に陰圧がかかってつぶれてしまい、ひどいときには息が止まってしまう。睡眠時無呼吸症候群は肥満だけではなくアレルギー性鼻炎でも起こるのである。苦しくなって口呼吸をすると口内や喉が乾燥してこれまた気道を塞ぎやすくなる。当然ながら息が止まれば血液中の酸素濃度が低下して苦しさから睡眠がとても浅くなってしまう。たとえ中途覚醒がなくても睡眠がそのような状態では疲れが取れず、朝からグッタリしてしまう。

 第2の苦難は、アレルギー反応で産生される免疫物質によって慢性的な眠気が生じてしまうこと。スギ花粉などアレルギーの原因物質(抗原、アレルゲン)が体に入ってくると、免疫細胞から抗体(Ig E)が放出され、その後、さまざまな細胞に作用してインターロイキン、ロイコトリエンなどの炎症性メディエイターと呼ばれる免疫物質が連鎖的に放出される。これらの免疫物質がくしゃみ、鼻水を引き起こすのだが、中には強い眠気を生じるものが幾つもあるのだ。

「体を温めてゆっくり休みなさい」という健康法が人気を集めているが、もともと人にはそのようなシステムが備わっており、風邪を引くと免疫物質によって体温が上昇し、ウイルスの活動を弱め、免疫細胞の活性が高まり、同時に睡眠がとりやすくなるのだ。しかし花粉症の時期にずっと日中にも眠気が続くのはかなわない。

 ただでさえ眠いのにさらに追い打ちをかけるのが第3の苦難、治療薬による眠気である。最近でこそ眠気の少ない鼻炎治療薬が登場したが、アレルギー治療薬と言えば抗ヒスタミン薬、抗ヒスタミン薬と言えば眠くなるというイメージをお持ちの方も多いだろう。ヒスタミンはアレルギー性鼻炎のくしゃみ、鼻水の原因となるホルモンだが、同時に非常に強い覚醒効果を持つ脳内神経伝達物質としても働いている。それに抗するのだから眠くもなろうというもの。

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(イラスト:三島由美子)
(イラスト:三島由美子)
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