第20回 え? 花粉症で眠りの三重苦!?

 旧世代の抗ヒスタミン薬を鼻炎+不眠対策に使ってほしくない第2の理由は、そもそも不眠症の治療効果があるか確認されていないからである。眠気をもたらす物質は山ほどあるが、イコール、慢性不眠症の治療効果がある物質とは言えないのである。旧世代の抗ヒスタミン薬は慢性不眠症患者を対象にして長期処方したときの効能も安全性も確認されていない。したがって慢性不眠症の治療効果があると謳ってはいけないことになっている。

 にもかかわらず、くだんの旧世代の抗ヒスタミン薬、実は市販の睡眠薬としてドラッグストアの店頭で販売されている。「ナゼ?? 効果が確認されていないんでしょ?」という疑問を持った方は機会があれば「使用上の注意」をご覧いただきたい。そこにはこのように書いてある(下線部は筆者が記入)。

 こんなとき、こんな方の一時的な不眠
○ストレスが多く眠れない
○疲れているのに、神経が高ぶって寝つけない
○心配ごとがあって、夜中に目が覚める
○不規則な生活で、睡眠リズムが狂い、寝つけない

「次の人は服用しないでください。」
1.妊婦又は妊娠していると思われる人
2.15歳未満の小児
3.日常的に不眠の人
4.不眠症の診断を受けた人

 専門家の私でも、すぐには判別できない注意書きなのである。服用の際にはご留意を。

 花粉症患者は増加する一方で、今や日本人の5人に1人、2000万人以上いると言われている。この3/4が花粉症による眠りで困っているのだから社会に対する影響も甚大である。花粉症が車の運転にどの程度影響するか調べたある研究では、8割以上のドライバーが何らかの影響があると答えている。学校や職場で眠気が出るだけならまだしも、居眠り運転や作業中のけがなどには十分お気をつけください。

つづく

『8時間睡眠のウソ。
日本人の眠り、8つの新常識』

著者:三島和夫、川端裕人

睡眠の都市伝説を打ち破り、大きな反響を呼んだ三島和夫先生の著書。日々のパフォーマンスを向上させたい人はもちろん、子育てから高齢者の認知症のケアまでを網羅した睡眠本の決定版。睡眠に悩むもそうでない方も、本書を読んでぜひ理想の睡眠を手に入れてください。
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三島和夫

(イラスト:三島由美子)

三島和夫(みしま かずお)

1963年、秋田県生まれ。秋田大学大学院医学系研究科精神科学講座 教授。医学博士。1987年、秋田大学医学部医学科卒業。同大助教授、米国バージニア大学時間生物学研究センター研究員、米国スタンフォード大学医学部睡眠研究センター客員准教授、国立精神・神経医療研究センター睡眠・覚醒障害研究部部長を経て、2018年より現職。日本睡眠学会理事、日本時間生物学会理事など各種学会の理事や評議員のほか、睡眠障害に関する厚生労働省研究班の主任研究員などを務めている。これまでに睡眠薬の臨床試験ガイドライン、同適正使用と休薬ガイドライン、睡眠障害の病態研究などに関する厚生労働省研究班の主任研究者も歴任。『8時間睡眠のウソ。日本人の眠り、8つの新常識』(川端裕人氏と共著、集英社文庫)、『睡眠薬の適正使用・休薬ガイドライン』(編著、じほう)などの著書がある。近著は『朝型勤務がダメな理由』。