第20回 え? 花粉症で眠りの三重苦!?

 眠気のない抗ヒスタミン薬の条件は、鼻に効いて脳内では働かないことだが、古いタイプの抗ヒスタミン薬は血液中から脳内に移行するため大脳皮質にあるヒスタミン受容体に結合して強い眠気を生じてしまう。これを改良して脳内に移行しにくくしたのが第2世代の抗ヒスタミン薬である。今では第2世代が治療薬の主流になりつつあるが、未だに旧世代の抗ヒスタミン薬を好んで処方するドクターもいる。

 その理由の1つがアレルギー治療と不眠対策の「合わせ技一本!」狙いである。鼻閉がある、息苦しい、眠れない……。そこで眠気があって鼻炎にも効くなら「寝る前に」服用すれば一石二鳥ではないかと、そのように考えるのは自然である。しかしこれは2つの理由から誤りであることが分かっている。

 第1の理由は副作用としての過剰な眠気である。確かに旧世代の抗ヒスタミン薬を服用すると寝つきは良くなる。ところがその眠気は朝になっても取れないことが多い。それはなぜかというと抗ヒスタミン薬はいったん脳内ヒスタミン受容体に結合するとなかなか離れにくいからである。ある脳画像研究によれば、旧世代の抗ヒスタミン薬を服用してから12時間以上経過しても、その半分は脳内ヒスタミン受容体に結合したままであったという。血液中からは大部分が排出された後でも、である。旧世代の抗ヒスタミン薬はなかなかしぶといのである。

 その結果何が起こるのか。私たちは以前にある旧世代の抗ヒスタミン薬と、睡眠薬、プラセボ(偽薬)を健康な若者に就寝前に服用してもらい、翌日に記憶力、計算能力、特定の刺激に対する反応時間など高次脳機能に及ぼす悪影響を比較したことがある。結果は旧世代抗ヒスタミン薬の惨敗であった。眠いだけではなく、仕事の能率が低下すること間違いなしの結果であった。

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