まず睡眠時間だが、確かに季節変動はある。ただし、第13回「もっと光を! 冬の日照不足とうつの深~い関係」でも触れたように、睡眠時間が長くなるのは冬季である。冬の夜は長く寒いので寝床にいる時間も長くなるのだが、実質的な睡眠時間も長くなることが分かっている。

 また、日照不足から体内時計が夏よりも遅れがちとなり夜型に傾きやすい。特に北欧など高緯度地域では夏季に比べて冬季は1〜2時間ほども生体リズムが遅れるため寝つきや起床に苦労する人が増える。これは「冬季不眠 winter insomnia」と呼ばれ、現地では体感的によく知られている国民病である。したがって春眠ならぬ「冬眠、暁を覚えず」の方がピッタリくる。

 では、日照や気温などの季節要因のために「春先に」眠気が強くなることがあるのか? 残念ながらこの疑問についても科学的に実証したデータはない。実証されているのはやはり「冬季の」眠気である。もちろん、年度末の決算や異動、新年度の行事などで寝不足の人は、春の日差しも暖かい休日の朝にゆっくりと二度寝ができればさぞかし心地よいと思う。

 孟浩然は立身出世とは無縁の人であったらしいので、「寝不足ですっかり寝過ごしてしまったな」ではなく、「長い冬が終わり鳥のさえずりで心地よく目覚める良い季節になったなぁ、こんな日に朝からあくせく出仕とはご苦労なことよ」くらいの心情を詠んだ句ではなかったろうか。

 いやいや、あれもこれも関係ないじゃ記事になりません、春先に眠気を感じる人は実際いるのだから可能性でもよいので何か一言を、と取材で粘られた時は、早く帰っていただくためにも個人の責任において「仮説」を紹介することにしている。

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