第101回 睡眠と認知症と「夕暮れ症候群」

(イラスト:三島由美子)
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   烏 なぜ啼くの
   烏は山に
   可愛七つの
   子があるからよ

 おなじみ、野口雨情が作詞した童謡「七つの子」の冒頭部分である。巣に残したひなを心配する親カラスの気持ちを歌ったものらしい。子供のいるご家庭ならば、カラスならずとも、可愛い我が子の顔を見たさについつい家路を急ぎたくもなるだろう。

 だが、夕方にちょっとノスタルジックなこのメロディーを聞くと、帰宅するウキウキした感じではなく、漠然としたさびしさや不安を感じるのは私だけだろうか。

 夕方になると気持ちがざわめくのは認知症高齢者も同じのようである。認知症のケア病棟や施設の中では、夕食時ともなると「そろそろ家に帰る」と言い張るご老人と、それを押しとどめて何とか食べてもらおうと奮闘する施設職員のやり取りが、日本全国、世界各国で毎晩のように繰り広げられている。

 日中は穏やかに過ごしていた人でも、夕方近くになると少しずつ落ち着きがなくなり、徘徊や独り言が始まったり、時には興奮して叫び声を上げたりする様子がしばしば見られる。このように夕方から夜間にかけて認知症患者が不穏になる現象を「夕暮れ症候群 Sundowning syndrome」と呼ぶ。「日没症候群」や「たそがれ現象」などの別名もある。

 認知症の治療やケアに関わったことのある人であれば、夕暮れ症候群の存在は経験的によく知っており、過去の幾つかの調査では認知症高齢者の少なくとも10%以上で認められると推定されている。

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