第133回 朝起きられないその不登校は「睡眠障害」?「気持ちの問題」?

(イラスト:三島由美子)
(イラスト:三島由美子)
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 不登校の児童が増加している。2021年10月に文部科学省が発表した調査結果(*1)によれば、令和2(2020)年度の小中学校における不登校の児童数は19万6千人あまりで、令和元年度より1万5千人弱増加している。在籍児童生徒に占める不登校児童の割合は2%に及ぶ。

 文部科学省によれば、不登校は「年度間に連続又は断続して30日以上欠席した児童生徒」のうち「何らかの心理的、情緒的、身体的、あるいは社会的要因・背景により、児童生徒が登校しないあるいはしたくともできない状況にある者(ただし、『病気』や『経済的理由』による者を除く)」と定義されている。登校できなくなる原因はさまざまだが、文部科学省では不登校の要因(原因)を図のように分類して統計を取っている。

小・中学校における不登校の要因(不登校児童生徒数に対する割合)
小・中学校における不登校の要因(不登校児童生徒数に対する割合)
「不登校」と回答した児童生徒全員につき主たる要因一つを選択した。資料*1から筆者が作成
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 不登校の原因として抜きん出て多いのは小学校、中学校ともに「無気力・不安」、次いで小学校では「親子の関わり方」と「生活リズムの乱れ、あそび、非行」、中学校では「いじめを除く友人関係をめぐる問題」と「生活リズムの乱れ、あそび、非行」が続く。

 不登校の原因がはっきりしている場合には学校や家庭において対応がなされ、私たち医療者が介入することは少ないのだが、子供たちが抑うつや不安、不眠などを呈するようになると小児科や精神科外来を受診してくる。クラスメートによるいじめや、親からの暴力、ネグレクトなどで心的外傷を受けてストレス症状が見られる、などが代表的な例だ。

 また意外に思われるかもしれないが、睡眠障害外来でもしばしば不登校の相談を受ける。調査結果で示されているように、不登校の主な原因の一つに「生活リズムの乱れ」がある。「あそび・非行」と一つのグループにされてしまっているので夜遊びによる朝寝坊をイメージしやすいが、睡眠障害外来を受診してくる生徒の場合少し事情が異なる。

「学校に行きたくても、朝に起床できないため登校できない」「無理矢理起こしてもボンヤリして着替えもできない」「大声をかけても揺さぶっても全く反応しない」「昼頃になってようやく起床するが、朝に起こされたことを覚えていない」。このような状態が続くため、睡眠障害ではないか精密検査を受けるよう担任の先生やかかりつけ医などに勧められて受診するケースが多い。

 実際、自宅での睡眠状態を携帯型脳波計やアクチグラフ(睡眠をモニターできるウェアラブルデバイス)でチェックすると、長時間睡眠や睡眠相の後退(寝つき、起床時刻の大幅な遅れ)、昼夜逆転などの睡眠の異常が認められることが多い。長時間睡眠は9~10時間、時には12時間以上にもなり、睡眠相後退と合併した場合には明け方から眠り、昼過ぎに起床する完全な昼夜逆転になることもある。

次ページ:睡眠リズムの乱れは不登校の結果では

*1「令和2年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」

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