第45回 睡眠中に手をガブリ、そのワケは?

 1つ目は、睡眠そのものに異常が生じるタイプ。不眠症のように睡眠の量や質が低下するもの、昼夜逆転のように睡眠リズム(睡眠時間帯)が崩れるものなどがある。

 2つ目は、日中にしっかり目覚めることができないタイプ。夜間に十分に眠っても日中に強い眠気で悩まされる過眠症などはその代表だ。

 そして3つ目が、睡眠そのものは正常だが、睡眠中に異常な現象が生じるタイプ。徘徊や興奮などの異常行動、呼吸が止まる、痙攣やピクツキなど筋肉の異常な動き、頭の中で爆音がしたり手足がムズムズするなどの異常感覚、動悸や発汗などの自律神経症状、パニック発作で目を覚ますなど多種多様である。いずれも症状が長引くと、結果的に睡眠の質が低下してしまう。

 先の「手を囓る男」は、この3つ目のタイプの睡眠障害に属する。このタイプの睡眠障害だけでも何十種類もあるが本人が語った「夢遊病」も確かにその1つ。

 夢遊病という名前はよく知られているが、正式には「睡眠時遊行(ゆうこう)症」と呼ばれる。名前の通り睡眠中にもかかわらずベッドから起き上がり、障害物を巧みによけて歩き回る、トイレのドアを開け閉めするなどまるで目が覚めているような行動をする。眠りが浅いように思うかもしれないが、実際には深い睡眠(←ココ大事)の真っ最中に動き回っている。そのためこの男性のケースのように、大声で呼びかけたり揺さぶったりしてもなかなか目覚めない。当然ながら、目覚めた後には自分の行動を全く憶えていない。夢遊病は子供に多いが稀に20代でもみられる。

 如何だろうか。ここまでは実に「らしい」。しかし残念なことに、夢遊病では「豚足を食べている夢を見ながら自分の手を囓った」というこの最重要ネタの説明がつかないのである。

 夢遊病には「夢」という字がつくためレム睡眠中に生じていると誤解されやすいが、先ほど説明したように深い睡眠中、つまりノンレム睡眠中に生じている。これは日本語訳が拙いのであって、睡眠時遊行症(sleep-walking)の方が適切な名称。夢は必ずしもレム睡眠の時だけ見るわけではないのだが(第16回「夢はレム睡眠のときに見るのウソ」)、深い睡眠中にリアルな夢を見てその内容通りに豚足ガブリとなる可能性はごくごく低い。

 となると次に挙がる候補は「レム睡眠行動障害」である。名前の通りレム睡眠中に異常行動が生じる睡眠障害である。

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