第45回 睡眠中に手をガブリ、そのワケは?
先日、「豚足を食べている夢を見ながら自分の手を囓(かじ)った男」というジョークのような中国発のニュースが話題になった。人口が多いとさまざまな珍事が起こるものだなと感じた方も多いと思うが、実は寝ている間にこの男性のように不可思議な行動を取ってしまう人は中国に限らずかなり多い。一般的な睡眠障害外来であれば週に一人くらいは新しい患者さんが受診するほどポピュラーな症状なのである。
とはいえ、今回の「豚足ガブリ」を医学的に見れば首をかしげる部分も見受けられた。そこで、この男性に本当はいったい何が起こったのか考察してみたい。意外と多いこうした行動への理解を深めるとともに、睡眠障害の診断プロセスの一端を理解していただくよい素材と思ったからである。ごく短い記事であったが経過を要約すると以下の通り。
浙江省に住む20代の男性がいとこの家を来訪して飲酒し、そのまま宿泊した。翌朝、自分の左手首を囓って血を流しているところを発見され、大声で呼びかけても反応が鈍いため病院に担ぎ込まれた。後に本人が語るには「豚足を食べる夢を見ていた」。夢の内容そのままに行動していたわけである。「これまでにもあった。生まれつきの夢遊病者と言われている」
このように情報はとても少ないが、幾つかの睡眠障害を連想させる大事なキーワードが隠されている。
睡眠障害というと、不眠症のように睡眠が短くなったり浅くなるなど、睡眠の質が低下する病気というイメージをお持ちの方が多いと思うが、それは睡眠障害の一部に過ぎない。ほかにどのような睡眠障害があるのかざっくりと分類してみる。
睡眠障害は症状のパターンから大きく以下の3タイプに分けられる。

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