第44回 寝酒がダメな理由
【ケース1:たまの晩酌。酒量もほどほど】
厚生労働省が「節度ある適度な飲酒」という実にありがた〜い指標を設定している。それによると「1日あたり純アルコールに換算して約20グラム程度」が節度ある飲酒の目安となるという。下記を参考にみなさんの普段の晩酌の純アルコール含量を計算していただきたい。
ビール(中瓶1本500mL)・・20g
清酒(1合180mL)・・22g
ウィスキー・ブランデー(ダブル60mL)・・20g
焼酎(35度、1合180mL)・・50g
ワイン(1杯120mL)・・12g
晩酌を「たまに」やる程度なら、たとえ就寝時間に近くてもさほどの心配は不要である。「節度ある適度な」アルコールであれば睡眠前半の深い睡眠(徐波睡眠)を増加させ、ぐっすり感をもたらすこともある。
私たちの脳内にはGABA(ギャバ)という神経伝達物質があり、脳内の大部分の神経細胞の表面にはGABAが作用する部位(GABA-A受容体)が存在する。GABAがこの受容体に結合すると覚醒作用をもつ神経細胞の活動が抑え込まれ、眠気が生じる。アルコールも胃腸から速やかに吸収され、血液に乗って脳に到達し、GABA-A受容体に結合して催眠効果を発揮するのだ。
ただし、睡眠の後半になるとアルコールの血中濃度が急激に低下する「リバウンド」のせいで、早朝覚醒をしてしまうことも少なくない。平均的な大人の場合、1時間に7gのアルコールを代謝できる。日本酒1合であれば3時間で消失する計算だ。就寝前まで飲んでいると深夜にアルコールが体から引けて催眠効果が消失するだけではなく覚醒してしまうので注意していただきたい。
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