第100回 「上質な睡眠を」と言われても、その「質」が難しい

 睡眠ポリグラフ検査では、睡眠の深さや長さ、睡眠に関連した異常の有無を調べる必要がある。脳波だけではなく、眼球運動や筋電図(筋肉の緊張を見る)、呼吸、心電図、動脈血酸素飽和度などを測定するため、さまざまなセンサーを頭皮や顔面、胸や腹、手足に装着して眠ってもらうことになる。

 初めて睡眠ポリグラフ検査を受ける場合、センサー類が気になったり、慣れない睡眠環境で寝かせられる緊張から、普段の睡眠よりも寝つきが悪かったり中途覚醒が増えるほか、深い睡眠が減ってしまうことが多い。睡眠の深さも変動しやすく、睡眠全体の構造が不安定になる。このような検査によるストレスや環境変化が睡眠状態に及ぼす影響を「第一夜効果(first night effect)」と呼ぶ。

 新しい睡眠薬の薬効を評価する臨床試験(治験)などでは服薬後の睡眠状態を精密に測定する必要があるため、1晩の睡眠ポリグラフ検査だけでは不足で、2晩、時には3晩にわたって検査を行うこともある。

 では回数を増やせば普段の睡眠に近いデータが得られるのかと言えば、神経質な被験者の場合には3晩目でも4晩目でも自宅での睡眠状態とは異なるというのだから検査室内では限界があると言わざるを得ない。

 さらに話がややこしくなる現象が知られている。奇妙なことに、不眠症患者の中には自宅の寝室では眠れないが、病院の検査室では爆睡してしまうという人が多いのである。不眠症患者は「自宅の寝室が緊張する場所」になっているため、自宅以外の場所、例えば睡眠検査室などでは緊張がむしろほぐれて眠りやすいのである。これも一種の第一夜効果と呼んでもよいかもしれない。ここら辺は第29回「“青木まりこ現象”からみた不眠の考察」で詳しく説明したので関心があればご一読いただきたい。

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