第122回 知られざる子どもの不眠症、とても苦しい「特発性不眠症」とは

 大人のストレス性の不眠の多くが一過性であるのに対して、特発性不眠症は幼少期に出現して以降、寛解することなく、長年にわたり持続する。

 アトピー性皮膚炎の痒みによる不眠、睡眠時無呼吸症候群、睡眠時驚愕症(夜驚)、睡眠時遊行症(夢遊病)など不眠が生じる子どもの病気は他に幾つもある。また、注意欠如・多動症(ADHD)や自閉スペクトラム症などの発達障害でも不眠や眠気、リズム異常などがしばしば合併する。しかし、特発性不眠症ではこれらの原因が見当たらず、病因は現在も不明である。

 特発性不眠症は「苦しい不眠」として知られている。長年にわたり不眠が続くだけではなく、大人と違い不眠が毎日出現する。実は大人の不眠は眠れる夜と眠れない夜が混在していることが多く、そのため「週に3夜以上」不眠があれば不眠症と診断するのだが、特発性不眠症では眠れる日がほとんど無い。そのため、日中には眠気や倦怠感が強く、イライラで癇癪(かんしゃく)を起こしたり、注意力が低下して学業がはかどらないなど日常生活に大きな影響がある。

 これらの症状との因果関係が不明なのだが、特発性不眠症の子どもは、学習障害やADHDに似た行動を見せることが多い。物事に神経質だったり、不安が強い子どもも多い。ただし、先にも書いたように発達障害や不安障害などの精神疾患の診断には当てはまらず、あくまでも不眠症が主たる問題なのだ。

 特発性不眠症の有病率に関するしっかりした調査データはほとんどない。幼い子どもは不眠症状をうまく認識できず、親も気付いていないことが多いため、病院に相談に来るケースはごく稀だからである。思春期の青少年を対象にした不眠症の調査では、特発性不眠症が疑われたのは1%弱であったという。ただし、特発性不眠症の診断には、その他の睡眠障害をすべて除外する必要があり、大規模調査を行うのは技術的に大変難しい。そのため現在でもその罹患実態は完全には明らかになっていない。

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